第2章 センラ
促されたソファーに座り込んで、服を身に付けるとおでこにヒヤリとした何かをくっつけられた。
「頭痛伴う二日酔いには頭を冷やすとえぇんやって。冷えピタあったから貼ってみた。後は水分補給…コーヒーがえぇんかぁ?ほんまかいな?」
スマホを見ながらブツブツとなにかを呟き、あちこちと忙しなく彼は動く。
「これ、水分な。あぁ〜!昨日お風呂入ってもうたから二日酔い悪化したんかぁ!でも頭蜘蛛の巣だらけやったしなぁ」
そうなんだ。だからいの一番に頭を洗ってくれていたのか…。
冷えたペットボトルの緑茶を口にふくみながら改めて昨夜の悲惨な自分の姿を思い描く。蜘蛛の巣まみれでほぼスッピンの疲労しきった女をよくもまぁこの人はアレコレ世話する気になったものだ。
「鎮痛剤あったかなぁ?」
スマホをスクロールしながらいそいそとまたリビングから出て行ってしまった。
何日かここに通ううちにわかったことは、あんな風に彼は興味を持ったことや関心のあるものはすぐに調べるタイプらしい。
自分は面倒くさがって後回しにしたり、何事にも関心がなかったりすることが多いので彼の行動力や興味を持つ範囲の広さに驚いたものだ。
無音になった部屋でソファーの背もたれに寄りかかる。ベランダが一層できる大きな窓から温かな日差しがさし込んだ。
「あったあったー!薬あったよぉ〜!お風呂は頭痛が治まるまで待ったほうがえぇねんて!」
コップにたっぷり注がれたお水と市販の鎮痛剤を持ってセンラさんが戻ってきた。
「飲んどいて。ご飯もできてるけど食べれる?」
「は、はい。ごちそうになります。すみません、なにからなにまで」
「気にせんでえぇよぉ。ほな、準備するなぁ〜」
アレコレと世話を焼いてくれるセンラさんにどっぷりと甘えてしまえば、薬の効きも相まってすぐに頭痛は治っていった。