第2章 センラ
突然、眩い光が自分の視界を遮った。染みるようなまぶしさにいっとき目を瞑る。しかし、よくよく慣れればなんてことはない常夜灯で、橙色の優しい明かりが視界を包む。
背中をみせていた彼がゆっくりと私の方へ向き直した。目力のある桃花眼が私を捉える。この目に見つめられると脳が痺れて、体が動かなくなる。
この、美しい瞳に自分が映し出されていると思うとたまらなく恥ずかしい。視線を外してしまいたいのに、捕らわれたようにそれをすることができない。どんどん端麗な顔が私へと近付く。
「しょーもな」
唇が、ふれる。軽くそっと。一度だけ。
「どーしょもないくらい、好きもんやな。自分」
そう言って、センラさんがとても、とても嬉しそうに笑ってみせた。柔らかに細められた目。大きな口元から綺麗に陳列された白い歯が覗いている。その笑顔をみて、全身が熱くなる。
喜んで…いるのだろうか?嫌がっているのではなくて?
沸々と湧き上がる期待。自分は結構、この人に気に入られていると。自惚れても…いいのだろうか?両思いなんておこがましいことは思わない。ただ、この先もセンラさんのそばにいられるのだろうか?恋愛感情が私にあるとわかっていても、一緒にいる時間を作って貰えると。そう、思って良いのだろうか?
Tシャツを捲し立てられ、乳房を舌で転がされる。その、ベロの熱さに体が飛び上がった。
「全部、脱いで」
少し切羽詰まったような低い声で、自分の使う標準語とは違うトーンで彼が言う。体を起こして、その指示に従えばベッドの横に備わったサイドテーブルに散らばるゴムをセンラさんが一つ取り出す。
「そ!そのゴムじゃないのがいいです!」
いつも使われる、ローションがたっぷりめに入ったコンドーム。彼が用意してくれたものだが、毎度毎度感じすぎてたまらない。ので、実は前回事務所に用意されていたゴムを一箱、拝借して持ってきたのだ。
にも関わらず、彼は私の持参したコンドームを使ってはくれなかった。パッケージを見るなり「これはやめた方がえぇんちゃう?」などと訳の分からないことを言ったのだ。