第2章 センラ
大人しく自分も布団をかぶって横になった。時計の針を刻む音だけが聞こえてくる。
契約時間外だから、彼は私を抱かないというのだろうか?それまで律儀に我慢していると?
変なところで妙に真面目な人だと思った。店側にバレなければ良いとか、考えない。考えたとしてもこの人はそういう事は決して、しないのだ。
お金の問題ってだけでもないんだろうけど。でも…。そこまで思考を巡らせてふと思いたつ。
あれ?そういえば、今日私を助けるために借りたというレンタカー。車を借りるのだってタダではないはずだ。私がいなかったら発生することのなかった金銭。ならば、ここは私が支払うのがスジというもの。
「あの、センラさん。まだ起きてますか?」
「起きとるよ」
「今日、借りたレンタカーの料金。私に支払いをさせてください」
「またそういうこと言うんか。俺がしたくて行動に移しただけやし。お金はいらんよ」
「それなら…」
手探りで隣にいるはずの彼を探しだす。あたたかい、自分とは違う体温を見つけてそれに両腕でしがみついた。
「私も、今、センラさんとしたくてセックスするのでお金はいりません」
「なら、今後もいっさい金出さへんよって言われたらどうするん?一度、金銭なしで体を許すとそうやってつけあがる奴絶対おるで?」
「センラさん以外の人とは金銭なしでなんてしません」
たとえ金銭ありでも、今の私では出来るかわからないが。話が逸れてしまうのでそこは口には出さなかった。
「だって、センラさんだけだから!私がしたいと思う人は。私、センラさんが好きなんです!」
随分と身勝手で自分本位な告白だ。彼は私がこの気持ちを伝えることを望んでなどいない。それをわかっていて、わかっているくせにこうして口にしている。
汚いと思いながらも、彼の優しさにつけこんだ。彼が、自分を強く拒まないのをいいことにこうして攻め入って。
どこまでも、最低で悪どい。それでも良いから、少しでもこの人の記憶に自分を刻みたい。一日でも一瞬でも長く。彼の中に自分を残しておけたなら。