第2章 センラ
「流石に女性モノは家にないからな。コレで我慢してや!その間にチャチャっと洗濯して乾燥機かけたるから!」
どうやら女性モノのショーツのかわり、らしい。服を全部洗濯してくれるようだ。乾燥機を使用するならそれほど時間もかからないだろうし。なにぶん、あの汚い掃除用具入れに隠れてあちこち汚れている。今回だけ、彼の言葉に甘えることにした。
「あの、本当にお風呂…二人ではいるんですか?」
おずおずと彼に問いかけてみる。
「はぁ?なんなん?嫌なん?別にもう全部みてるからえぇやんけ」
「嫌、ではないのですが…」
裸を晒したことがあるないとか、そんな問題ではないのだ。しかし、夜の仕事をしている手前、客との入浴などオプション程度のものなのかもしれない。
こんな明るい場所でマジマジと裸を見られるのが恥ずかしい、なんて。プロ意識が足りない気がした。
スッと彼の腕が伸びる。私にふれようとしたその手に反応して、ビクリと体を震わせた。最近、やたらと彼の事を意識しすぎている気がする。
「…まぁ、さっきのは冗談として。ゆっくりあったまってな。リビングにいるから、何かあったら声かけてね」
柔らかな笑みを浮かべたまま、彼が私の横を通り過ぎる。少し猫背な後ろ姿に哀愁の片鱗を感じたような気がした。
腕を伸ばし、慌ててその背中を抱きしめる。
「やっぱり、一緒にお風呂…入りたいです」
寂しげな背中をどうにかしたくて咄嗟に放った言葉。
反応の無さに不安になって彼の顔を覗きこめばニタリと嬉しそうに笑っていた。
これは…。やってしまったかもしれない。哀感漂う雰囲気はどうやら自演だったらしい。まんまと、彼の手に引っかかってしまったのだ。
「そんな言われたら一緒に入ってあげなくもないなぁ?うむうむ。別に俺は後から一人で入っても良かったんやけどなぁ。でも、どうしても一緒に入ってほしいんやったら仕方ないなぁ。入ってあげようかなぁ?」