第2章 センラ
大きな手が顎に添えられて、ゆっくりと反対方向へ誘導される。私がセンラさんの方へと向き変えればすぐに彼の手は離れた。バックへとシフトレバーを変更し手早く方向転換をする。すぐにまたドライブへとシフトチェンジして、あっという間に今いた公園が小さくなっていった。
「あいつで間違いないん?」
そう、質問するセンラさんに「はい」と小さく返答した。車内で語りだした彼の話によると、どうやらセンラさんが公園に着いた時にはもうあいつが周辺をウロウロとしていたそうだ。
「最初、怒鳴ってしもて。ほんまごめんなぁ。相手を威嚇してこっち来させるの止めたかったんよ」
申し訳なさそうに彼は言うが、その作戦は大成功だったのではないかと思う。こんな明るい髪色で高身長、切れ長の瞳のキリッとしたイケメンが凄んでいたら誰だってたじろぐ。
外見はどうみてもホストだもんなぁ。
そう思いながらまじまじと顔を覗いていると信号が赤になった瞬間に流し目でこちらをみつめられた。
こんな薄暗い中でも十分にわかる。彼の顔面の綺麗さが。その美しさに思わず息をのんだ。彼は無表情のまま、青に変わった信号をみて再び車を発進させた。
「どれが良いか選んで。①自宅まで送る②自宅近くのコンビニでおろして、そこからは誰か別の人に迎えに来てもらう」
どちらが良いのだろうか?その二択だと自宅まで送ってもらうのが無難だろうか?そう考えこんでいると「さん…」と三つ目の選択肢をセンラさんが提案した。
「このまま、明日の契約が終わるまで俺といる。と言っても、もう一時過ぎとるから今日の話なんやけどなぁ」
茶化すように笑うと、どれが良い?と彼は問いかけた。
「三番目は…迷惑になってしまうのではないですか?」
「迷惑やとおもっとったら最初から選択肢に入れへん。あんな後やし、一緒にいる方が俺も安心するんよ。香澄をこのまま一人にはしたないなって思て提案してるんやけど」
困ったように笑いながらセンラさんがため息をつく。