第2章 センラ
「香澄ちゃんには、真っ当な恋愛をして欲しいのよ。あんな、実る可能性もない体だけ売る関係なんかを好む浅はかな子達とは違うものね」
違う。本当に浅はかなのは私だ。事務所にいる彼女たちはなんだかんだで現実をしっかりと見据えている子が多い。自分の身の丈にあった相手をよく考えて吟味している。
それはとても利己的だし打算的だ。しかし、自分はそうじゃない。
自分の立ち位置とか、相手のレベルの高さとか、そんなの関係なく惹かれている。
本当はわかっているのに。自分では彼には釣り合わない。あれだけ有名で知名度の高い彼が、こんな地味な私を夜の相手として選んでくれるだけでも珍妙なことなのだ。
それなのに、自分は単純だから。彼に優しくされたら浮ついて、笑顔を向けられたらどうしようもなく嬉しくなる。
あぁ、そうだ。一番浅はかで無様なのは私だ。それでも私は、見苦しいくらい分不相応だといわれても。
私は、彼が。センラさんが、好きなんだ。
強いお酒を嗜んだせいだろうか?心の中で必死に保ってきたフィルターがいとも簡単に剥がれた音がした。
ずっと。折角、ずっと、懸命に。誤魔化して、きなのにな。
あーぁ。そうため息を吐いてテーブルに突っ伏す。もう、酔いが回りすぎてきちんと座位を保つ力も残されていなかった。
「そんなとこで寝ちゃ駄目よぉ。ねぇ?この子可愛いでしょ?事務所の子達は顔だちも服装も派手派手しいけど、この子だけは可憐で素朴なのよねぇ。あんたのタイプだと思ったのよ!ほら!膝枕、してあげて!」
突然、体を揺り動かされた。視界の歪みが増して、気分の悪さが加速する。かと思えば生温かいナニカの上に頭を強引に乗せられた。そして、横向きに寝かされた。