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【R18】家政婦の記録簿【うしさせ】

第2章 センラ


火傷跡についてもう一歩踏み込んで話がしたかったのだがそうもいかなそうだ。
仕方なく私は冴島さんの座るデスクへと足を向かわせる。私が彼女と距離を縮める事に周囲の視線が鋭く、冷たくなっていくように感じた。

「お疲れ様〜。待ってたのよ」

「お疲れ様です。ただいま、戻りました」

「今日も難しい日勤のお客様相手に頑張ってくれたのよねぇ。偉いわぁ。他の子たちももうちょっと昼間真面目に働いてくれるといいんだけど。夜にばっかり精を出してないで。ねぇ?」

これだ。なにかと最近、私への周囲の視線が冷たい原因。
この冴島さん。どうやら私の外見だけで夜の仕事はしていない子だと判断したらしい。一度、それとなく自分も夜勤をしていると伝えたことがあったのだがこの見た目ゆえか、冗談のように受け取られてしまった。
まぁ…これだけの美女揃いの中、私なんかを相手にしてくれる客などいないと思うのはごく自然な考えなのかもしれない。

冴島さんは夜の仕事を毛嫌いしていて、その事を大っぴらに態度に出している。ならば、なぜここに課長の代わりとして来たのか疑問に思うところだが…。

夜の仕事をしているこの事務所の子達も嫌悪の対象になるらしく、私を引き合いに出してはこうしてチクチクと嫌味を言っているのだ。
おかげで、今のこの悲惨な現状が出来上がったというわけだ。

「もちろん、夜はあいてるんでしょう?これからお食事でもどうかしら?」

この、もちろん、の中には夜の仕事は入ってないんだから…という意味合いも含まれているのだろう。
一瞬、断ってしまおうか?そんな思いが胸を掠めた。しかし、自分の口から出てきたのは誘いを受けるという内容の答えだった。

一人で知り合いもいないこの事務所に来て、自業自得なところはあるとはいえ、周りにコソコソと言われながら日々業務をこなす。そんな冴島さんの姿がこれまでの自分と重なる時がある。
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