第1章 はじめの一歩はここからでした。
本丸への移動中、依織は悩んでいた。
「…んーーーーー」
ずっと唸っている主となった少女に対して怪訝そうに、それでいてできるだけ直視しないように被った布からチラリと見つめる彼。
その視線にも何となく気づいているけど、まず決めないといけないことがある。
(何て呼んであげたらいいんだ!?)
山姥切国広と言う、彼の名前。
人の形を取ってるけど、元々は刀であってその付喪神である。
審神者の力によって人の身体を得たわけで、きっとそれまでは名前なんてまともに呼んでもらっていないはず。
「そのまま呼ぶと長いし…山さん?なんか違う。ヤマンバさん……昔流行ったメイクした人がそれだったっけ…」
本人も気づかない内に、口から考えてることがダダ漏れ状態になっていた。
唸っている理由をそれで理解したのか、山姥切国広は息をつく。
「俺は、山姥切の写しとして打たれた刀だ。…主はあんただ。好きに呼んでくれればいい」
「じゃあ、ヤマンバさん」
反応は、無し。
「返事しないじゃん。嫌かっ、嫌なのかっ!?」
無言。
「じゃあ山さんで」
彼は無言を貫いている。
「うん、嫌なのね。ちゃんと言わないと審神者わかんないからねっ」
どうしよう…本当に困った。
刀の付喪神って何というか、静かというか暗いというか。そういう感じなのかな?
マシンガンとかピストルとかの付喪神だったらゴキゲンな感じの性格だったり?
そもそもそれらに付喪神っているのかな。いたら面白いと思う。
「…何だその目は。写しだということが気になると?」
じっと眺めていると、不機嫌そうに被っている布の隙間から見つめ返す彼。
どうやら眉を寄せて見ていたことで、何か勘違いされている模様。
それにしても―
「写し?…いやぁ、特にそんな事考えてないし。私、写しとか贋作とかってあんまりよくわかってない。もっと言うと、武器の名前と用途くらいしか詳しくないっ」
ざっくり言うと、刀剣には「写し」「贋作(がんさく)」「レプリカ」っていうのがある。
レプリカは、ある刀剣をイメージした模型。
贋作は、刀剣だけど作者が偽られていて本物ではないもの。
写しは、リスペクトする先行作品(本歌と呼ばれる)がある本物の刀剣。
曲で言うと本歌が原曲で写しがカバー曲って感じで覚えた気がする。
(あ、一応私わかってたんだ)
