第3章 運も実力のうち…だそうです。
「主っ!」
「あるじさまっ」
山姥切と五虎退の声に、目を開ける。
「あれ、寝てた?」
確か子虎にじゃれつかれてたはずなのに、何故か自分の視界がおかしい。
自分の体が浮いている状態だった。しかも高い!
いや、浮いてない。
体にぬくもりを感じると気づいた時に全てを察した。
(誰かが私をお姫様だっこしてる!?)
山姥切と五虎退は依織を抱き上げている何者かを凝視しており、こんのすけに関しては何だか真っ白になっていた。
魂でも抜けたんだろうか。
ようやく自分を抱き上げている人物に目をやると、やや強面の青年の顔があった。
視線に気づいた彼はゆっくりと赤い瞳で見つめ返してきたが、怖いとは思わない。
見た目と裏腹な穏やかさを感じる。
そして、今さっきまで感じていた強い霊力をまとっていた。
「この姿になった時、あんたが飛ばされそうになっていたからこうなってしまった。立てるか?」
頷くとゆっくりと降ろしてくれた。
降りて気づいたが、彼はものすごく背が高い。
山姥切よりも15cmは高いだろうか。
「…天下五剣が一振り、大典太光世だ」
数ある日本刀の中で特に名刀といわれる五振りの名物の総称、それが天下五剣。と聞いたことがあった。
どうやら彼はその中の一振りらしい。
ということは顕現する刀剣男士の中でもかなりのレア刀ということになる。
こんのすけが白い理由は、おそらくそれだろう。
「来てくれてありがとう、大典太!私は彩乃依織っていうの、この本丸の主だよ」
「審神者どの!これは一大事です!!!」
こんのすけが声を上げた。
「まさか先日正式実装されたばかりの大典太光世を顕現させるなんて!札も無しな上に!三振り目とは!!」
「いや、使ったよ?依頼札と手伝い。手伝いの方はちょっと強引に呪印で書きつけちゃったけど」
「また知らぬ間にそんな…こうしてはいられません!わたくしは政府に戻ってこの事を報告しなければいけませんので失礼しますっ」
ものすごい速さでこんのすけは去っていく。
「……さて。こんのすけ帰っちゃったし、互いの自己紹介をしつつお仕事再開しますか!」
何事も無かったかのように輝くような笑顔で、依織は親指を立てた。
この日を境に、彼女の運命が大きく変わっていくことを…まだ誰もが知る由も無かった。
