第3章 運も実力のうち…だそうです。
その時の出来事を思い出した依織は、山姥切へ歩み寄る。
「…覚悟は決まったのか?」
やはり、彼もあの時の事を思い起こしていたようだ。
「ここまで来ちゃ、ね。決めてやるしかないかなって」
「いいんだな?」
静かに頷く。
本当はまだ少し不安はある。
けど、この先も戦い続けるならやるしかない。
「まんばくん、お願いが…ちょっとだけ、手を握ってほしい」
依織の差し出した手が少し震えていることに気づくと、山姥切は少し躊躇いつつも空いている片方の手をそっと添える。
「きっと大丈夫だ…あんたなら」
「うん、ありがとう…」
その言葉と温かい彼の手にホッと落ち着くかと思いきや、段々と鼓動が早くなってきて逆に顔が熱くなる。
何だか恥ずかしくなってきたので、紛らわす為に勢いでガバっと山姥切に抱き着いた。
「まんばくん、大好きっ!」
「!?」
「よっし!やるよぉ!!」
山姥切が戸惑っている間にすぐ抱擁を解くと、何事もなかったかのようにしれっと依頼札を掲げる!
しかも掲げたのは二枚だった。
今さっきまで一体何を見せられていたんだろう状態で固まっていたこんのすけだったが、それを見た途端に驚きで大きく口を開ける。
「審神者どの、まさか!?」
「二振り。文句ないでしょっ?」
ちょうど鍛刀部屋には二つの鍛錬所がある。
そこに刀装と同じ大きさの小人が二人待機していた。
審神者の間では『鍛刀の妖精』と言われているらしい。
依織は依頼札の裏に何やら指で素早く書きつけると、それぞれの妖精に向かって投げつける。
妖精たちはそれを見事キャッチすると、札の書きつけを読んでうんうんと頷き、了解と答えるように手を振ってきた。
続いて妖精用に作られたらしい少し小さい二つの荷車に山姥切が持っていてくれた資材を入れていく。
彼とそれぞれ荷車を持っていき、妖精に渡すと早速作業を始めるために彼らは奥へ引っ込んでしまった。
ここまでの作業は時間で言うと二分程度である。
ちなみに、鍛刀の仕方も本丸によって少し異なったりするという話があるようだが定かではない。
「鍛刀はしてなかったけど、鍛刀の段取りはしっかりしているようですね…やや独特ですが」
流れ作業に圧倒されたのか独り言のように呟くこんのすけ。
「作業を早める札も混ぜたから、もう完成するよ。…っ!?」
