第3章 運も実力のうち…だそうです。
「…痛いよね…ごめんね…っ」
手入れ部屋で横たわる山姥切の側で、彼の本体である刀の手入れを泣きながら行う。
彼の顔は青ざめ、血の気が引いていた。
多くの敵を前にしても決して怯まず、刺されても斬りつけられても…体の一部が落とされても、たった一振りで戦い抜いた。
その後普通に帰還し、依織の姿を見つけた途端に意識を失って倒れてしまった。
自分が、彼をこんな酷い姿にさせてしまった。
戦いたかったのは、むしろ自分だったのに。
「酷い主だ、私っ…」
涙はとめどなく流れる。
どんなに力を使っても、依織は霊力切れを起こしたことは無い。
だけど、手入れはいつも時間がかかってしまう。
何とか落ち着いたのは、山姥切が帰還してから半日以上が過ぎたあたりだった。
彼の側で膝を抱えていた依織は、懐から徐に依頼札を取り出すとじっと眺める。
(戦力を増やす…でも、怖い…)
新しい刀剣男士を迎えても、上手く力が働かなくていきなり刀に戻ってしまったらどうしよう。
それに…
「これ以上まんばくんに酷い怪我させるわけには…」
「俺が写しだからか?」
反射的に体が飛びのく。
山姥切は先程と違って顔色も良く、戦いによって負った酷い傷もすっかり治っていた。
「猫みたいだな」
「いきなり声かけるからっ…からだは、大丈夫?」
「…問題ない。それにしてもあんた、酷い顔をしてる」
「私だからいいけど、他の女の子には言っちゃいけないから、女泣かせだからソレ!」
女泣かせの使い方も違うなと思いながらも、安心して再び涙腺が緩む。
「目から水…いや、涙か…俺なんかの為にすまない」
「違う、私のせいだから。まんばくんにばっかり負担かけちゃって……鍛刀、したほうがいいよねきっと」
「…無理にする必要はない…と、思う」
「えっ」
「不安があるなら、やらなければいい。…決めるのはあんただが。いつかそうしようと思った時に…すればいい」
布団から身を起こすと、彼は修復された本体の刀を持ちその居住まいを正した。
「その覚悟が決まるまで、俺は一振りだろうと戦う。…あんたの分までな」
どきん、と鼓動が跳ねた。
胸を抑えながら、ふいっと顔を背けてしまう。
「いつか一緒に戦ってやる…」
その後「やはり写しの俺が言っても…」が始まり宥めに入る依織だった。