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刀剣乱舞 常勝の君異聞録 第一本丸編

第3章 運も実力のうち…だそうです。


時は少し遡り、万屋。

主が商品を物色している間に周囲の観察をしていた。
店内は多くの審神者や刀剣男士で賑わっている。
この辺りでは一番大きい店なのだろう。

楽しそうに一緒に商品を眺めている審神者や刀剣男士、保護者の様に振る舞う男士、これが欲しいとせがむ男士もいた。
同じ個体でも、本丸によっての振る舞いや審神者との関係も異なるのだというのもわかった。

中には妙にお互いの距離が近いのもいた。


(今の俺と主は…どんな関係なのだろう)


瞬時に頭に出てきたのは、布を洗おうとじりじり近づく主と対抗するかのように被っている布をしっかりと掴む自分の姿。
またそれとは別に、自身が時を超えて遡行軍と戦おうと多くの武器を携えた彼女を止める自分の姿も浮かび上がる。

主君と家臣であれば、主君である彼女はかなり乱心していることになる。
実際、乱心していると少し思っているが。

ふと、周りに同じ個体の自分が各々自由に店内の商品を物色していたり、手持ちの財布をのぞき込んだりと様々な行動をしているのが見えた。

別の場所では一人の審神者が刀剣男士に何度も頭を下げて謝っている。
傍らには謝っている相手と同じ男士がいる。
どうやら自分の刀剣男士を別の個体と間違えたようだった。


(…主は、どこに俺がいるのかわかるだろうか…)


すると、ちょうどいい頃合いで彼女の声が聴こえた。

「まんばくん、帰るよー…って」

思った通りだ。
何振りかの個体は彼女の方に向いているし、主は複数の俺がいることに気づいて停止している。
どの俺も見た目は一緒だ。
先程の審神者と同じ様に、一振りずつ声をかけて確認でもするのだろうか。
その手間を掛けさせない為にこちらから向かおうとしたのだが、主はすぐに歩き出す。

そして―


「帰るよ、まんばくん」


真っすぐに俺に視線を合わせていた。





帰り道、店内での出来事と先程の彼女の言葉を思い返しながらふと主の様子を眺める。
万屋へ向かう道中と違い少しだけ表情は柔らかく見える。
それでもやや視線は鋭いが。
けれど、こちらの視線に気づくと彼女はニッと笑いながら俺の顔を覗き込む。

「ん?どしたー?」

「…っ、なんでもない」

「そっか」

主は俺を見つけてくれた。
それが嬉しいと気づいたのは、本丸に戻って荷を下ろした際に舞った桜の花びらだった。
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