第3章 運も実力のうち…だそうです。
万屋には色々なものが豊富にあり、どれもこれも目移りする。
食材は勿論、戦闘に役立つものや嗜好品、調度品等々。
「うわー、これは…これは頻繁に来ちゃいけないやつだ」
あまり長時間いると、買わなくてもいい物も買ってしまいそうなので、必要最低限の食材をチョイスしていく。
傍にいる山姥切も店内にあるもの全てに目移りしているようだ。
その様子が何だか可愛くて、ついついじっと見てしまう。
だが途端にハッと、我に返る。
(…さっきから何なの私は)
自分の様子に心配して声を掛けてくれたのに、いきなり眩いイケメン笑顔を向けられてついそっぽ向いちゃったり。
まだ少しだけ、鼓動が早いのは気のせいだよね。
(そもそも別にイケメンには興味ないし!あったら多分ヴィート見た瞬間にドキドキとかするでしょフツーは!)
と、ふとその政府の彼を思い浮かべたが湧き上がる感情は―
どつきたい。
(…うん!無いわ!!)
不思議と落ち着いた。そう、これが私の通常運転だ。
必要なものだけを次々と選んでいき、会計を済ます。
「まんばくん、帰るよー…って」
気づくと、周辺に山姥切国広が多く居た。
他本丸の別個体なのだが…。
正直ここまで同じ個体が多くいる場面を観るのは初めてだったので一瞬固まってしまう。
数振りの山姥切国広はこちらへ振り返っていたが、依織は内心少しそれにたじろぎながらも顔には出さずにてくてくと前進する。
そして、迷う事なくその中の一振りに対して声を掛けた。
「帰るよ、まんばくん」
周りに同じ個体がいる中、声をかけられたその山姥切は目を大きく見開く。
彼こそが、依織の初期刀だった。
「ああ…」
その返事に少しだけふっと笑いかけると、依織はまた来た時と同じように一緒に並んで店を後にする。
「なぜ…俺だとわかったんだ?」
「んん?」
帰り道、荷物を持ってくれた彼から尋ねられた。
「あれだけ多くの山姥切国広がいたのに、あんたはなぜ俺が…あんたの刀だとわかったんだ…?」
「審神者は、自分が顕現した刀ならすぐわかるもんだよ。別に難しいことじゃないって」
視界に広がる多くの山姥切国広には正直びっくりはした。
けれど、その中に安心できる霊力を持った一振りがいるのをすぐに感じ取った。
探す必要なんて全くなかったのである。