第3章 運も実力のうち…だそうです。
道中、初めて山姥切は主以外の人間を目にした。
万屋を利用している審神者は他にも大勢いて、刀剣男士も同じように大勢いる。
別個体の山姥切国広も見かけた。
外出は初だったので、周りや通り過ぎる者達を控えめに、けれど珍しそうに眺める中…ふと違和感に気づく。
依織が、一言も話さない。
外に出るまで、朝起きてからずっと話を交えつつ、畑仕事や馬の世話をしていたのに今は全く会話が無かった。
布越しから盗み見ると、その表情は何の感情も持ち合わせていない無表情。
(さっきの事を気にしているのか?)
布がよれてしまった事を気にして、話が出来なくなっているのかと山姥切は思っていた。
本人としてはそこまで気にしていない、寧ろ彼女が何に対してあんなに切羽詰まっているのかがわからず戸惑っていた。
声を掛けようにも、自分より一歩前を歩く依織の周りを取り巻いているものがそれを許さなかった。
それは、周りを拒絶している空気。
他の審神者と刀剣男士が楽しく談話しながら歩いている一方、こちらは二人して沈黙のまま。
時折すれ違い様に会釈をしてくる審神者たちもいて、山姥切が返すものの依織は目もくれなかった。
まるで向かう場所にしか興味が無いような、そんな様子だった。
「主…っ」
「え?」
直後にゴン、という鈍い音がした。
何故かもやもやと気持ちが落ち着かなくなり、意を決して声を掛けた山姥切だったのだがタイミングが悪すぎた。
依織が歩いていた側に瓦版があったらしく、普通に歩いてれば避けられたが振り向いたことで見事に角の部分に頭をぶつけてしまう。
「ぉぉぉ…」
「すまないっ、主…俺のせいだ」
「私が、前方不注意…うう、だからへいき」
痛みで涙目な依織を見て、自分が声をかけてしまったからだと落ち込んでいるとその場で頭を優しく撫でられた。
「へーきへーき!ほら、生きてるから何ともないでしょ?」
「…頭の一部がふくれてるが…」
「たんこぶってやつね。その内ひくから!」
にかっと笑いながら頭を撫でてくれる彼女の様子を見て安心したのと撫でてくれる手が嬉しくて、山姥切の周りに少し桜が舞っていた。
「なら、よかった」
少し目を細めると、依織は突然背を向けたが小さく「行くよ」と言った。
「ああ」
今度は二人並んで歩いた。