第2章 本丸での新生活ですよ。
気が付いた時、視界は先程と違って暗く感じなかった。
目は開けられそうだったが、少し瞼は重たい気がする。
そして、少し遠くの方で話声が聞こえた。
「あれにはびっくりしました!下手したら報告ものですっ」
「正規のものじゃないって言ったじゃん。それに今回の事態について、今度出向いて責任者出て来いって殴り込む勢いだけどおっけぃ?」
「ダメです。わたくしは一旦政府へ戻ります。後は審神者どのにお任せしますから、しっかり頼みますよ?」
「わかったよ。あ、ヴィートに首洗って備えてろって伝えといて」
「…あの方は本当に難儀ですね…」
会話が終わったのかしんと静まり返る中、こちらへ近づく足音が聞こえる。
少し目を開けると、何処かの天井だった。
「気が付いた?」
その声の方向へ目を向けると、襖から顔を覗く依織の姿があった。
部屋に入ってくると、側までやって来て腰を下ろした。
そこで初めて、山姥切は自分が布団に寝かされていることに気が付く。
「ごめんね。傷は手入れで直るけど…体が慣れてないからまだ少し怠いかも」
申し訳なさそうに依織は謝る。
本当に初っ端からそんな事態になると思わなかったのだ。
「あのお守り、火事場の馬鹿力を瞬間的に引き起こす火種になるように力を込めたもので。握って中の霊力を弾けさせる事で一時的に強くはなるんだけど、反動でしばらく動けなくなっちゃうの」
万が一の緊急用として作ったのだが、まだ試作段階だったので副作用がどの程度のものかまではわからなかった。
山姥切が倒れた後、すぐさま依織が転送術を展開して本丸に撤退させると手入れを行った。
刀剣男士は元々は刀の付喪神である為、本体である刀の手入れを行う事で傷を癒す。
先ほど負った傷が消えている事に山姥切は今更ながらに気づいた。
そして、自身が被っていた布も取り払われている事に…。
「布はちゃんと刀と一緒に置いてある。けど今はそのまま休んで」
「…洗われても困る」
「今はやんない。私も疲れたからちょっと横になる」
と、依織もその場で寝転ぶと山姥切の方へと体を向ける。
「まんばくん」
「何だ?」
「おかえりなさい」
ニッと明るく笑う依織。
山姥切は、何だか心が温かくなるのを感じた。
手入れ部屋に桜がしばらく吹雪いた。