それでも私はかの君を愛してる【twst・ハリポタ】
第6章 赤の王がその名を汚す
スノーとはどんな少女だったか。
トレイは目の前の戦況を見ながらふとそう考える。
いつものんびりと穏やかで、人のいい笑顔。
時折、入学式の時のように冷たい一面を覗かせることはあったが、ここまでゾッとするような彼女の姿を、誰が想像できただろうか。
スノーの杖からは赤い光が迸る。
それを防ぐかのように薔薇のツルが伸びてくる。
迫り来る薔薇のツルをひらりと華麗にかわし、杖を振りあげてそれらを焼き尽くす。
自分たちが戦っていた先程までと打って変わって、リドルが防戦一方になっていく様子を、ただただ茫然と眺めるだけだった。
「スノーまで!
スノーまで僕を否定するのかい!?」
リドルの叫びにスノーは応えない。
ひたすら彼を追い詰めていくその姿に、見ている者は言葉を失った。
クロウリーは言っていた。
"スノーくんが到着したら…"
彼はこうなることをわかっていたのだ。
スノーがオーバーブロットしたリドルを凌駕する力を持っていることも
スノーがこれだけ戦闘慣れしていることも
全てわかっていたのだ。
そう考えると少しゾッとした。
彼女は一体何者なのだろうか。
「答えろスノー!
許さない、許さないぃぃぃ!」
うぎぃぃと顔を歪めたリドルの気持ちに呼応するかのように、薔薇の勢いが増していく。
それでも顔色ひとつ変えずにスノーは向かってくる全てを焼き尽くした。
燃え尽きた残骸の火の粉が降り注ぐ中、火の粉よりも赤い光が真っ直ぐに走る。
リドルの額を綺麗に射抜いたその光がやけに鮮やかに映る。
誰かが息を飲んだ音がした。
ぐらりとリドルの体が大きく揺れ、そのまま地へと落ちていく。
その光景がやけにゆっくり、スローモーションのように見えた。
「リドルッ…!」
トレイの小さな叫びが空へと消えた。