それでも私はかの君を愛してる【twst・ハリポタ】
第6章 赤の王がその名を汚す
サバナクロー寮のマジフト演習場で、スノーはビュンビュンと箒を飛ばしていた。
レオナの指導の元、箒で逃げ回るスノーにタッチできた人から休憩だ。
とはいえ未だに誰も休憩に入れないあたり、スノーも容赦ない。
「レオナさん、スノーちゃんのスマホ、鳴ってるッス」
万が一ポケットから落ちるといけないから、とベンチに置いていったスノーのスマホがチカチカと点滅している。
レオナはちらりとそれに目を向けると声を張り上げる。
「ッチ…
お前ら!もういい休憩しろ!」
さすがにディスプレイにクロウリーと表示されていれば、無視する訳にもいかない。
ノロノロとくたびれて戻ってくる寮生に呆れながら、華麗に着地をきめたスノーにスマホを投げ渡す。
「鳴ってんぞ」
「おやまぁ、お手数お掛けしました、キングスカラー先輩」
箒で飛び回るのが楽しかったのか、ニコニコとしたスノーがスマホをキャッチする。
そのまま耳に当てるところまでは、笑顔だった。
「もしも…え…?」
レオナの耳は人の耳よりもよく音が聞こえる。
近くで喋るスマホの通話音なんて丸聞こえだった。
"ローズハートくんがオーバーブロットしました"
その言葉を耳にした瞬間、スノーの顔が険しくなったのをレオナは逃さなかった。
"クローバーくん達が足止めしています。
すぐに対処に向かってください。
最悪の場合には…処分を許可します"
聞こえてきた言葉にレオナは目を見開いた。
オーバーブロット。
魔力を酷使しすぎた場合などに起こる、暴走状態だ。
2年生まではオーバーブロットという現象がある、としか習わないが、だがしかし、3年生であるレオナは知っていた。
オーバーブロットを早期に抑えられなかった場合、化け物へと成り下がり二度と人に戻ることは無い。
その先は殺すしかないのだ。。
つまりは、クロウリーはスノーにリドルの殺処分許可を出したということだ。
その衝撃がレオナの頭を駆け巡る。
「承知しました学園長」
俯いて返事をしたスノーの顔は見えない。
「学園長から呼ばれたので、お先に失礼しますね。」
「おぅ…」
何事もなくヘラりとした笑顔でそう告げてきたスノーに、レオナは短くそう返事をするしかできなかった。