それでも私はかの君を愛してる【twst・ハリポタ】
第6章 赤の王がその名を汚す
「そんなに不機嫌にならないでよ」
「あ゛ぁ!?」
スイーツを試食どころかフォークまで噛み砕きそうなフロイドに、スノーは苦笑いを浮かべる。
どうやらこのウツボの機嫌を完全に損ねたようだ。
テーブルに足をあげ、瞳孔が開いてギラギラとした目になっている。
「おやおや…お行儀が悪いですよフロイド」
「うるせぇな…黙ってろ」
普段は仲良しのジェイドに対してもこうなのだから、不機嫌さは振り切っている。
確かに全員で意地悪にからかった。
だがしかし、まさかそこまで不機嫌になると思わなかったのだ。
3人は苦笑いしながら顔を見合わせる。
「そういえばモストロ・ラウンジにはピアノもあるのね」
「えぇ。たまにアズールが弾くんですよ」
「せっかくですし、スノーさんも弾かれますか?」
「そうねぇ。
今はピアノよりも、ダンスの気分かしら。」
スノーはフォークを齧るフロイドの頬に手を伸ばす。
ギロリと不機嫌な瞳がスノーを睨む。
「1曲お付き合いいただけるかしら、王子様?」
これだけ荒れているフロイドに触れるなんて、勇者だとアズールは目を細めた。
ニッコリと笑みを浮かべながら、その恐ろしい瞳に臆することなくスノーは言葉を紡ぐ。
「1人では踊れないもの…どうかしら、フロイド?
アズールが弾いてくれるみたいだし。」
彼女はフロイドの扱いをよく心得ている。
普段は嫌って呼ばない名も、こういう時にはすんなりと呼ぶのだ。
数秒たてば、瞳孔が開いていた瞳が普段通りに戻っていく。
「オレが?
スノーちゃんと、踊るの?」
「イヤなら仕方ないけれど…」
「いいよー。
踊ってあげるー!」
まるでぐずっていた子供がお菓子を貰った時のように、パァァァァと笑顔になるフロイドに、ジェイドがため息をつく。
なんて単純。
なんてちょろい男だ。
「じゃあエスコートしてくれるかしら、王子様」
「いいよ、オレのお姫様」
スノーはアズールに目配せすると、差し出されたフロイドの手にその手を重ねた。
やれやれ、といった顔でピアノに手をかけたアズールはそっと目を伏せる。
フロイドには陸の曲の曲名なんてわからないだろう。
なんだかんだ1番いい思いをしている彼に、少しだけ意地悪したくなったのだ。
弾く曲は
So this is love。