それでも私はかの君を愛してる【twst・ハリポタ】
第6章 赤の王がその名を汚す
アズールの両腕をしっかりと腰に回させ、しがみつかせると、スノーは地を蹴った。
グングンと上がる高度に、その腕の力が少し強くなる。
自分でノロノロと浮くのとは違うスピード感と浮遊感が、少し怖かった。
アズールは自分よりもかなり小柄なスノーに必死にしがみつく。
未知の感覚の恐怖に、思わず目をぎゅっと閉じる。
「アーシェングロット、腹黒リーチとハートローズ先輩よ!」
楽しそうなスノーの声に、うっすら目を開けてみると、実験着に身を包み真面目に作業に取り組む2人を見つけた。
「ほら、魔法史の教室にはキチガイリーチがいるわ」
自分の箒とは違って安定感のある飛行に、少しだけ慣れてきた。
教室内のフロイドと遠目に目が合う。
大きく目を見開いたフロイドの顔がおかしくて、笑みが零れた。
スノーが操縦する箒はグングンと高度をあげていく。
自分では上がったことのない高さになっても、不思議と恐怖心はなかった。
いつもより強く陽があたっているからか、目の前のプラチナブロンドがとても綺麗に輝いて見える。
アズールは物事をよく見ていた。
さっきスノーが読んでいたのは最新の錬金術の論文集だ。
背表紙にクルーウェルの名前が書いてあったのだから、恐らく彼から借りたのだろう。
今の自分が読んでも全く理解が出来ないだろうし、まだ早いと言われて貸して貰えないレベルのものだ。
眩しい、そう感じた。
スノーの能力が、頭脳が欲しい。
もっと彼女のことが知りたい。
地上に戻ったらじっくり策を練るとしよう。
今はこの空の旅を満喫すればいい。
アズールはそう考えをまとめると、ぎゅっとしがみつくその腕に少しだけ力を込めた。
逃がさない。
絶対に手に入れてみせる。
そんな決意をした、とんでもなく青く晴れた昼下がり。