それでも私はかの君を愛してる【twst・ハリポタ】
第5章 内から抉り出す
すぅすぅと寝息を立てるスノーの頭を撫でながら、クルーウェルは煙管に火を入れた。
思い出されるのはこの少女が学園に来た日の事だった。
学園長から緊急で教師全員が鏡の間に招集されたあの日。
"異世界から女の子が来ます。"
クロウリーは珍しく切羽詰まった声でそう言った。
魔法戦争が起こっている世界
闇の帝王と呼ばれ恐れられていた魔法使いが死んだこと。
その男とクロウリーが闇の鏡を通じての友人であったこと。
その男の大切な少女を守るためにこの学園に飛ばすという計画。
すべてが初耳だった。
純血の魔法使いが支配する世界を作りたかった男。
恐怖政治でその世界を支配していた男。
ヴォルデモート卿
その男の大切な少女がスノーだった。
詳しくは語られなかったが、その男のそばに付き従い、権力を握る為に必要不可欠だった存在。
側近の中でも1番そばにいた少女。
敗者の生き残りが、終戦後にどんな扱いを受けるかは容易に想像ができた。
帝王の1番の側近となれば、その未来は悲惨なものだろう。
"彼は私に、万が一自分が死んだらこの少女を頼む、と言いました"
そう言うクロウリーの声が、悲しそうだったことも印象的だった。
闇の帝王がその天才的な頭脳を駆使して考案した、異世界に人間を飛ばすという術式には、送る側からも受け入れる側からも、膨大な魔力が必要だった。
教師3人が最大限の魔力をこめた。
本当にそんな事が可能なのか疑問を抱いていた時だった。
"この裏切り者どもが!"
綺麗なソプラノで人をなじる声が鏡から聞こえた。
"スノー、すまない。
だが私も家族を守りたかったのだ。
そして私はお前も娘のように思っている。
だからこそ、我が君からこの命令を受けたのだ。
スノー、我が君からの最後の命令だ。"
"我が君はお戻りになる…!
いかなる手段を使おうとも、私が蘇らせる…!"
"スノー…どうか幸せに…!"
"スノー…どうか生き延びて…!"
"スノー姉様…どうかご無事で…!"
"ルシウス!ナルシッサ!ドラコ!"
闇の鏡が強く光った。
それと同時に魔力が強く吸い上げられる感覚に、横にいたバルガスが呻いた。