それでも私はかの君を愛してる【twst・ハリポタ】
第4章 監視し手を下す
グイッと襟が締まった。
そのまま風を切る感覚がデュースを襲う。
痛みはない。
何が起こったのか理解が出来ない。
ただわかるのは、自分の体が宙に浮いている、ということだけだった。
「マルフォイ先輩!?」
下からエースの驚愕した声が聞こえる。
締まる襟に息苦しさを感じながらも見上げれば、逆光で顔こそ見えないものの、あのプラチナブロンドの髪がなびいていた。
「止まるな、走れ!」
下に向かって喝を飛ばすスノーの声に、デュースはじんわりと涙が浮かぶのを感じた。
助かった。自分は生きている。
そう実感したのだ。
猛スピードで飛ぶ箒にぶら下げられながら、デュースは下を見る。
目の前で獲物を横取りされた化け物が、荒れ狂っている。
「動かないで、バランス崩れるから。
そのままじっとしてて。」
視線を上に戻せば、自分の襟を引っ掴んだまま、もう片方の手には杖が握られているのをみて、デュースは思考が再度止まった。
この人は、今箒を掴んでいない。
まだ箒に乗ったことがないデュースでも、それがとんでもない技術であるのくらいはわかる。
そしてスノーは杖を振る。
「"インペディメンタ"」
杖から一瞬光がほとばしり、化け物が後方に吹っ飛んだ。
自分たちが力を合わせてなんとか足止めをした化け物が、一瞬で吹き飛ばされたことに、目を見張る。
「降ろすよ」
「は、はい!」
衝撃的な展開に、理解が追いついていないが、必死に返事だけを返す
走り続けていたエース達のところで、ふわりと地面に近づいて、そこで手が離された。
着地に困らないくらい、デュースは丁寧に地上に戻された。
「な、なんで先輩がこんなところに…」
息を切らしながらもエースが問いかける。
「なんで、って、…最初からいたわ。
命の危険がないように監視を任されてただけよ。」
体力も尽きかけている3人と1匹とは違い、余裕な表情で言ってのけるスノーに、一同の思考が一瞬止まる。
「ほら、そこの橋まで走りなさい。
あとはこっちでなんとかするから。」