それでも私はかの君を愛してる【twst・ハリポタ】
第7章 核心には届かない
「…バァ♡」
「うわぁぁッ!」
空をぼーっと眺めていたら、突然視界にドアップで鋭いギザ歯の並んだ口が現れた。
屋根に上手く足を引っ掛けてぶら下がるフロイドの顔が、まつ毛が触れそうな距離で上から降ってきたのだ。
「アハッ♡
スノーちゃん、驚いたぁ?」
イタズラが成功した子供のように笑うフロイドは、そのままチュッとスノーに口付ける。
「んっ…
そりゃ驚くわよ。」
彼とのフレンチキスなんて、挨拶みたいなものだ。
いちいち気にしていても仕方ない。
「アハハッ!
あのねぇ、パルクールしてたらスノーちゃんが見えたからここまで登ってみたぁ。」
無邪気な笑顔で、フロイドはくるりと一回転しながら着地した。
その身体能力の高さに、羨ましいと思いながらスノーは一瞬だけ見惚れた。
ターコイズ色の髪が日にあたって、まるでリゾート地の綺麗な水面みたいだ。
「スノーちゃんもサボり?
お揃いだねぇ」
クスクスの笑いながらスノーよ顔を覗き込んだ彼は、どうやら機嫌がいいらしい。
「残念でした。
私は仕事明けだから授業免除よ。」
「なにそれー。
スノーちゃん最近働きすぎじゃね?
全然授業こねーじゃーん。」
ちぇーっと唇をわざとらしく尖らせるフロイドに、スノーはふふっと笑みを零す。
「何笑ってんのー?
もういい!俺ここで寝る!」
プクーっと頬を膨らませたフロイドは、背後から抱きしめるようにスノーを抱え込んで座った。
柔らかい髪の毛が首筋をくすぐる感覚に、スノーは小さく身をよじる。
「ふふっ…リーチ、くすぐったい…!」
「んー?
だめー。大人しく俺の抱き枕になってて。
スノーちゃんも一緒にお昼寝しよ?」
スリスリと首筋に額を擦り付けるようにへばりつくフロイドはまるで、気まぐれな猫のようで。
背中の少し低めの体温が暖かくて、心地よい。
どのみちフロイドの気まぐれに付き合わなければ解放されない、とスノーは自分に言い訳をしながら大人しくその背中を彼に預けた。