それでも私はかの君を愛してる【twst・ハリポタ】
第7章 核心には届かない
まるで時が止まったかのように、騒いでいた1年生までもが静まり返った。
しばらくの沈黙の後、ゆっくりと、重たくスノーは口を開く。
「ローズハート先輩は、私が敬愛する人の名を知っていますか?」
スノーの声は静かな学園長室によく響いた。
「ヴォルデモート卿、だろう?」
それがどうしたの、と言わんばかりにキョトンとするリドルに、若干の申し訳なさを覚える。
これから言う言葉は、彼を傷つけるかもしれない。
「そうです、我が君の名前はヴォルデモート」
スノーが杖を振ると、空中に金色の文字が浮かびあがる。
"I am Lord Voldemort"
「私はヴォルデモート卿だ」
静かなスノーの声がそれを読み上げる 。
もう一度杖が振られた。
空中に浮かぶ文字はふわふわとその順番を入れ替える。
"Tom Marvolo Riddle"
「トム・マールヴォロ・リドル
これが我が君の本当の名前。
この名前を忌み嫌った我が君は…
自身をヴォルデモート卿と名乗ったの」
杖をもう一振すれば、その文字は空に溶けるように消えていった。
「私には、我が君と同じ名前を、呼び捨てで呼ぶことなんてできない。
我が君が呼ぶなと言った名前を口にだす事すら恐れ多い。
そして…我が君と同じ名前のあなたを、呼び捨てにするのが心苦しい。
だから、あなたの名前を呼べないの。」
言葉を切ると、スノーは目を伏せた。
これ以上は何も言うつもりがない。
誰もが言葉を失った沈黙の中、早くこの場から立ち去りたい、その思いだけがグルグルと巡る。
「学園長、書類に
不備はありませんか?」
「えぇ、いつも通り完璧ですよ
ご苦労さまです、スノーくん」
「ではお先に失礼します。」
そう言うが早いか、バチンという姿をくらましをする音が部屋に響いた。
逃げ去るように、誰かが言葉を投げるほんのわずかの時間すら与えずに彼女は立ち去った。