第22章 月と馬
結局、キスをしたのは月島で
穂波はキスをしてたって感じがした。
キスしたって言ったから2人でジリジリ近付いてする、
みたいなの想像してたけど。
またぼけっとしてる間にキスされて
気がつくまでそのまましちゃってた、みたいな。
これが巧みについた嘘だったらちょっと怖いけど
穂波はそんなことができる人間じゃない。
できるならそもそも、言わない。を選ぶだろ
『どの、好きなのかわからなくなった』
「どの好き?」
『ツトムくんに対する好き、クロさんに対する好き、犬岡くんに対する好き、カズくんに対する好き』
「……」
『どれも、好き。すごく魅力的でそんなはっきりとした線引きもない。
だから変な話、誰とキスするのも嫌ではないと思う』
「……」
『ごめん、やっぱわたしぶっ飛んでるかな。
でもね、研磨くんに対する好きではないってことは明らかだった。
わたしがわたしを捧げたいのは研磨くん』
「そうだね、ちょっとぶっ飛んでるかもしれないけど、理解できるよ。
あと、おれ別に傷付いてないから。
はっきりしないことが多すぎてイライラはしたけど。
穂波はおれのだから。今日ちょっとまたそれがわかったから」
何気に今日のLINEでのやりとりはけっこうパンチがあった。
穂波のこと昔から知ってる人たちに言われたのもあって
正直、すごい嬉しい。
「ゲイじゃなかったね」
『あ、ほんとだ。でももしかしたらどっちもいけるのかも。
あ、わたしも未開拓のバイなんじゃないかなとか思う時ある。
研磨くんはそういう時ない?』
「…ないかな。 でも穂波はそうかもね、って思うよ。
でも多分月島は、違うんじゃないかな。笑」
告白したのに、まだ男も好きかもって思われるって…
そう思う穂波もどんだけニュートラルなの。
「…で、キスのことだけど。おれに許して欲しい?」
『…許して、とは思ってない。ただ、隠したまま研磨くんと一緒にいるのはできなかった。
怒られても、無視されてもいいから、時間かかってもいいから、
研磨くんのそばに居させてもらいたかった』
「…なんで過去形?別れる気?」
『え… やだ。 あ、でも研磨くんが…』
「おれから別れるわけないじゃん。 馬鹿じゃないの」
『…ん』