第22章 月と馬
ー月島sideー
初心者だっていうのに、
結構な距離を馬に乗って走った。
馬が恋人同士だというだけあって、
走ってる時も寄り添うようにするし、
立ち止まってる時は顔を寄せ合っていた。
乗ってるこっちが勘違いに陥りそうなほど、
馬が… いちゃついてた。
馬に乗ったところに戻ると孤爪さんも赤葦さんもいなくなっていた。
馬術部の女性にもう戻る、って言って行ったらしい。
孤爪さんの余裕というか脱力感というか…ほんと底無しだって思う。
馬と馬術部の人に礼を言って見送る。
『楽しかったねー』
「あぁ、はい。予想以上に、気持ち良かったです」
穂波さんは、馬に乗ったからかあからさまに蕩けた顔をしてる。
馬の話をしてる時点でふわふわした顔になってたけど、
こんなにまでトロけちゃうの?っていう顔。
正直すごい唆られる。
『一緒に来てくれてありがとう』
「いえ、こちらこそ」
『…なんかさ、蛍くんとデートしてるみたいな気分になっちゃった。
あんまりベルちゃんたちがラブラブで』
「あぁ、僕もです」
『………』
「じゃあ、今のが初デートですね。お互いにそう思ったなら」
『…へっ あっ、うん。そうだね』
「…あ、連絡先、交換しましょう。メールでいいですか?LINEとかやってます?」
『あ、うん』
・
・
・
「穂波さんって僕のこと好きですよね」
『…ん?』
「………」
『…あ、うん。蛍くんのこと好き』
「…ッ……」
『ちょっと、わかんなくなる。あれ?ってなるよ、正直』
「…は?」
『これは何の好きなんだろうって。いろいろ助けてもらったし。…ってあれ、何言ってんだわたし』
「何の好きって?」
『友達として?弟っぽい感じ?お兄ちゃんぽい感じ?あれ、恋?みたいな』
「僕もです」
『…ん?』
「僕も、穂波さんのこと好きです」
『…あぁ、一緒だね。わからなくな………』
「わからなくはなりません。好きです。恋、してます」
『…恋、してます。かぁ………』
ポカーンとした顔、してるけど。
「キス、しますね」
『キス、しますね。かぁ……』
「はい。じゃ、失礼します」