第22章 月と馬
ー研磨sideー
『研磨くんッ』
段に座ってる俺の前に屈んで下から覗いてくる。
「…ん。行く?」
『うん、行こうかな』
月島とおれと穂波。
何この組み合わせ。
黒尾「どこいくんだ?」
『…デートの付き添い♡』
澤村「えっ?はっ?誰と誰のデートに付き添うんだ?」
木兎「…?」
『いってきまーす』
ベルって馬の彼氏も連れてきてくれるって言ってた。
2頭がデートするってことだけど。
え、ちょっと待って、烏野の主将おれと月島のデートとか思ってないよね。
『京治くん、行こっか』
「あぁ、うん」
えぇー………
赤葦も入ってくるの。ほんと何このメンバー。
「おーい!!こっちこっちー!!」
坂を登ったところに、馬を連れた快活そうな女子がいて手を振ってる。
穂波は途中猫又監督に呼び止められて持たされた人参を抱えながら走っていく。
こういうときの穂波は止められないというか、
矢印が一つの方向にあって、気がついたらもう隣にいない。
穂波は嬉しそうに馬を撫でて、確認をとってから人参を食べさせてる。
『研磨くんも、あげる?』
キラキラした目でおれに聞いてくるけど…
「…んー、月島が乗るんでしょ?乗る人があげたら?」
『あ、そっか?そっか、スキンシップ。はい、蛍くん』
「え、でも赤葦さんは…」
「俺はいいよ、見にきただけ」
そんな感じで人参をあげてから2人は馬に乗った。
穂波は乗り慣れてて、馬とひとつになってるみたいだった。
走ってもいいよって言われた場所で、馬に指示をだして颯爽と走る馬に乗ってる姿は、
本当に気持ち良さそうだった。
穂波は月島を迎えにくるみたいにUターンしてこっちにきた。
その時に、何枚か携帯で写真を撮った。
…後で見直す。多分かわいいはず。
月島は遅くもなく速くもなく、穂波のことを見守ってる感じ。
部員の人が、少しスピード出してみますかって聞いて、
穂波の方に走っていく。
「おれ、もう行こっかな」
「俺も同じこと考えてた」
おれらがここにいたら月島もペース狂うだろうし。
おれと赤葦はその場を去ることにする。