第22章 月と馬
ー穂波sideー
8月2日(木)
合宿最終日。
4:00
昨日の夜は、やっぱり最後の夜なんだなぁという感じで
すこし遅くまでマネージャーのみんなと話して過ごした。
何をってわけでもないんだけど、
永遠に続けられるガールズトーク。
マネージャーでもなくて中途半端なわたしを
こんなに暖かく迎えてくれて、仲良くなれて本当に嬉しい。
これて良かったなぁって思う。
朝干しておけば、天気もいいし午前の練習が終わる頃には乾いてる。
いつものように、洗濯物を取りに行って洗濯室に向かう。
自分の洗濯物は、少ないし家で洗って、
研磨くんと夜久さんに返そう。
洗濯が終わるまでの間、
もうすっかり見慣れた敷地内をゆらゆらとあるく。
次第に空の色が変わってく。
今日はピンク色に焼けた空。
綺麗。
そろそろ時間なので洗濯室に戻ると、
京治くんがいた。
「穂波ちゃん、おはよう」
『おはよう、京治くん』
「ここにきたら会えるかなって、ちょっと待ってみた」
『わぁ、嬉しい。ありがとう。空、綺麗だったね』
「うん。綺麗だった。穂波ちゃん見てるかな、って思ってた」
『…ふふ』
「きっとこれからも、早朝の空を見ると穂波ちゃんを思い出すと思う」
『わぁ…嬉しい。俳句とか短歌になりそう』
「…ん?」
『花とかさ、空とかさ、そういうの見て思い出してもらえるのって本当に嬉しい。
昔の人の俳句とか短歌をよむと、羨ましいくらいそういうの普通にあるんだ』
「そっか、そうだね。きっと彼も、そうやって思い出してると思うよ。
俺でさえ、いろんなところで穂波ちゃんを感じるんだから」
『…なんか最近、嬉しい言葉をもらいすぎてる気がする……大丈夫かな……』
「…?」
『そうだ、京治くん。京治くんのさ、好きな人についてひとつ聞いてもいい?』
「あぁ、うん。どうぞ」
『…京治くんにとって、どんな人かなぁって。ただそれだけなんだけど』