第22章 月と馬
学食からそのまま散歩に出て、
立ち止まって空を眺めたり、カブトムシを観察したり、
キスしたり、虫の声に耳を澄ませたり。
穂波と一緒にいなかったら、
ゲームして寝てたんだけど。
明日で終わる。
家に帰れるのも、一日中練習じゃなくなるのも嬉しい。
でも、穂波との夜の散歩とか、よかったなって思う。
階段のとこでキスして分かれて、
部屋に向かってると赤葦がいる。
…なにこれデジャヴ。
「…孤爪、ちょっといいかな」
「…んー」
断りづら…
「…ちょっとなら。 …なに?」
「少し歩きながらでも。
まぁ、孤爪はわかってると思うけど、俺は穂波ちゃんに好意を抱いてる」
「うん。 …それで?」
「だからどうとかじゃないんだ。でも、こそこそとするのも変だし伝えとこうと思って」
「…あぁ。 別に、全然こそこそしてなかったし、大丈夫」
「………」
「…んと、嫌なことがあったら遠慮なくいうけど。今のとこないし。
連絡先とか穂波が教えたならそれでいいし…」
あと月島と何話したっけ…
「あ、あと、おれは今のこと穂波に何も言わないから。
赤葦のタイミングで色々すればいいよ。 …もういい?」
「…俺は、自分の気持ちを穂波ちゃんに伝えるかはわからない。
伝えてしまったら、今まで通りにはいけない気がして」
「………」
「………」
「…多分、予想を超えていつも通りでいれるんじゃない。穂波ってそういうとこあるし。
…まぁ、その辺は赤葦の好きにすればいいよ。 …じゃあ、おれ、部屋行くね。 おやすみ」
「あぁ、うん。おやすみ」
…はぁ、みんな律儀だな。
でもなんだろ、伝わってる感がちょっとおもしろい。
穂波を好きになっちゃった人。みたいな括りというか。
…ま、いいや。
もう寝る。