第22章 月と馬
ー研磨sideー
『賢いといえば、最近蛍くんと話してると、
話についていけなくなって、変なこと聞こえたり、
何言ったか理解できなくなったりする』
…?どう言う意味だろ?
「…ん?」
『…唇が柔らかそうって言ったのを柔らかいって聞き間違えたり』
「………」
『好きですって聞こえたと思って、え、何が?って聞くと、え、何か僕言いました?って』
「………」
『あとツトムくんのこと話してたら、浮気相手でもいいや って』
「………」
『聞こえた気がするんだけどなぁ… えー蛍くんって幻覚なのかな。
お人形さんみたいな外見だし、わたしの妄想が作り上げたひと?』
「いや、実在する人間だから大丈夫」
『…だよね。うん。 …あ、もしかして蛍くんて男の人が好きなのかな』
「…え?」
…何でそうなるの
『ツトムくんのこと前に見かけたらしいのね。音駒まで見送ってくれた時。
それであれは誰ですかー?って …で、そのとき浮気相手って聞こえたと思うの。
それは言ってないって言わなかったから、もしかしてそう言う意味だったのかも』
「………それは…」
『うん』
「…違う気もするけど、おれにはよくわかんないや。その場にいなかったし。
でもまぁ、いつも通りでいいけど、月島が男を好きだと思って必要以上に距離縮めないでね」
『…あぁ、うん。そうだね。
つい、ゲイの子とかと仲良くなると女の子の友達以上にペタペタしちゃうこと多いから。
そうだね、気をつける。ありがとう、研磨くん』
…笑 悪いけど、ちょっと面白い。
がんばれー 月島。
「…じゃ、これで他の男の話はおしまい」
『…ん』
「馬の話、聞かせて」
ベルという馬の話、明日の昼過ぎのこと、
合宿後のタヒチ旅行のこと、
穂波ん家である、夏祭りのBBQに参加できないから
9月に入ってから音駒部員でやろう、
七輪で秋刀魚を焼こうとか。
穂波の頭にはわくわくが詰まってるみたいだった。
月島の考察はほぼ合ってる。
穂波の気持ちをしっかり受け取れてるから、
不安とか嫉妬とかに結びつかない。
…浮気相手でいいや。って、ちょっとそれは。
…でもまぁ、正直、月島の気持ちはわからなくもないかも。