第22章 月と馬
ー穂波sideー
午後練は今日で最後かぁ…
そんなことをぼんやり思いながらスコアをとる。
もう犬岡くんや芝山くんに聞かずとも、
できるようになった。
毎日ただひたすら試合をする選手たちの傍で
ただひたすらスコアをとっていたのだもの、当然ちゃ当然。
プレースタイルみたいなのが安定している4校と
未だ何をしてくるかわかんない依然としてまだまだ進化中の烏野高校。
どのマッチアップも見ていてほんとーうに楽しい。
今日は夕飯、当番じゃないし何しようか迷う。
自主練を見学させてもらうか、
敷地を散歩するか、マネの部屋でわいわいするか…
「穂波、きょう夜歩く?」
研磨くんにそう聞かれたら…
『うん、歩く。一緒に歩いてくれるの?』
この一択で決まり。
一緒にお風呂まで向かって、一緒に学食に向かう。
『そういえば、昨日マネの部屋に影山くんが来てね』
「うん」
『お風呂上がりのストレッチ一緒にしたんだけどね』
「うん」
『影山くんのお姉さん、東京にいることがわかって。
なんと!わたし知ってる人だったの』
「へぇ どういう知り合い?」
『ヘアメイクさんで、ちょこちょこ顔合わせてて、去年の撮影では髪触ってもらった』
「そっか。…すごいね」
『ね。すごいよね。なのに影山くん、そっスか、で終わり。笑
ツボに入っちゃって、涙でた。
で、次何言うかと思えば、ここ伸ばしてるとき顔の向きこっちでいいスか?って。
あぁ…思い出すと可笑しい 笑』
「…ん。 そういえば、朝泣いたっぽかったよね」
『あ、うん。朝、蛍くんに会って色々話してたら、
研磨くんの気持ちを想像して、いろいろ話してくれて』
「おれのきもち?」
『うん。こんな風に彼氏じゃない人と仲良くしてても平気なのは、
わたしが研磨くんのこと想ってる気持ちをちゃんと受け取ってくれてるからじゃないか、みたいな』
「…へぇ」
『蛍くんの憶測でしかないけど…そんな風に想像してくれたことが嬉しくて泣けた』
「…ん。そっか。 …やっぱあいつ賢いから、そうだね、的外れじゃないよ」
『…ん。良かった。…でも嫌なことあったら言ってね』
「うん。おれ別に我慢強くないから、心配しなくて大丈夫」