第22章 月と馬
『ねぇ、影山くん。 興味ないかもだけど話してもいい?』
ストレッチを一通り終えてから声をかけてみる。
『なんかこうやって、テキトーに股関節緩めながらでも聞いてて。
やっぱ話したいんだもん』
「あぁ、まぁ、いいっスけど。短めでお願いします」
『…笑 寝ないとだもんね。 なんなら枕元で話してもいいけど 笑』
「………いや、それはチームメイトの迷惑になるんで」
『…笑 はい。笑 じゃあ、ふざけずに端的に話すね』
「たんてき?」
『いろいろはしょっていきます。
うちの父親カメラマンなんだけど、ファッション系の仕事をよく受けてたのね。
いまはもうちょっと選り好みしてるというか、まぁ、そんな感じで。
それで、海沿いの撮影とかだとわたしも手伝ったり付いて行くこともあって。
4年前?はわたしは普通についてって海で遊んでたんだけど
美羽さんは見習いっていうの?アシスタントか、そういう位置でいたかな。
撮影終わってわたしは海から上がって撮影があったカフェで飲み物のんでた。知り合いのお店だからさ。
それで、弟と同じくらいかなぁーって話しかけてくれた。
わたしが中1だから、影山くんは小6だね』
「…はぁ」
『それで、何度か会ってるかな。海辺のカフェとか雑貨屋で撮影がある時についていったりした時。
去年は美羽さんに髪もいじってもらったよ。
わたしが被写体になる時があって。それはそんな雑誌とかじゃないんだけど
サーフ系のアパレルのカタログ撮影で。ブランドのチーフさんが美羽さんと気が合うみたいで。
ってそんな感じ。 はい、勝手に喋りました。以上です』
「ぅす。 …なんかあれっスね、縁があるんすね」
『わ!影山くんからそう言ってもらえるとは、嬉しい。そう、縁を感じたよ』
「じゃあ、これからも飯作ってもらえたら嬉しいっスけどね」
『…はい?』
「バレーして帰ってきて穂波さんのメシあるといいっスよね。
家でも、遠征先でも、ついてきてもらって」
『…はい?』
「あれ、わかりにくいっスか… ちょっと、言い方考えておきます。
じゃ、今日はこれで失礼します。ありがとうございました」
…おい!いい逃げ!
普通の人同士だとプロポーズみたいなこと言ったけど…笑
全然違う発想なんだろうな。
ちょっと免疫ついてきたから冷静でいられたけども…