第22章 月と馬
ー穂波sideー
京治くんの言う好きは、
わたしが彼女のいるお兄ちゃんの友達を好きだった好きとは、
ちょっと違うんじゃないかなぁと、勝手に思った。
わたしにこんな質問をしてくるほど、
その人のことを想っているのだろうし、
京治くんの感じ的に、憧れに近い好きってあまり想像できない。
好きになったならしっかりと好きになりそうな感じがする。
『え、全然、問題ないと思う。わたしも彼女いるとかいないとかは関係ないって思ってる。
たまたま今の彼にはいなかっただけで。 好きになったら止められないよね。
彼氏と別れてほしい、とか思う?』
「…それが全く思わないんだ。その子に笑っていてほしいって思う。
そりゃ、俺のことを好きになってくれて、
その結果別れることになるというかそういうことなら嬉しいだろうけど」
『…その子は幸せだね』
「…そう思う? それなら嬉しいんだけど。 迷惑じゃないかな、とか考えたりもする」
『迷惑?』
「俺の気持ちがさ」
『え!そんなこと絶対にないよ。 …って人それぞれだよね、絶対はないか』
「…あ、でも穂波ちゃんの考え聞きたいかな」
『…想ってもらえるのはいつだって嬉しいよ。その気持ちは。絶対にそう。
そりゃその気持ちの出し方が、その子やその子の彼氏を傷つけるものだったらダメだろうけど…
純粋に好きっていう気持ちは、どうしようもないし、京治くんが辛くないならいいと思うな。
京治くんが辛いなら、 …どうしたらいいんだろう』
「辛くないよ。全然、辛くない。力をもらってる。出会えて幸せだな、と心から思う」
『…そっか。それならよかった。幸せものだ、その子。
こんな素敵でかっこよくて優しい人にそんな風に想ってもらえて』
「…本当にそう思う?」
『うん、そう思うよ、心から』
「…それなら、俺も嬉しい」
『…ふふ。 わたし、そろそろ学食に向かうね。話せて嬉しかったよ、ありがとうネ』
「うん、俺も。ありがとう」
京治くんの胸の中を想像するときゅううと切なくもなるけど、
でもきっとわたしが京治くんでも同じように想うんじゃないかなって思う。
わたしはすぐ触っちゃうから、
それを抑えるのにきっと苦労するんだろうなぁ……