第22章 月と馬
ー穂波sideー
「おはよう、穂波ちゃん」
配膳当番に向かう前に、
洗濯物を取りに向かってると京治くんに声をかけられた。
『京治くん、おはよう』
「鼻歌うたって、踊るみたいに歩いてたね」
『…ふふ。 いいことがあったの』
「どんなこと?」
『森然高校には馬術部があるんだって。わたしそれを英里さんから聞いてから、
ずっとずっと馬に会えないかなぁって思ってたんだけどね。
今さっき散歩中の馬たちに会えたの』
「…そっか、俺も見たことないな、そういえば」
『京治くんも朝よく外にいるのにね。やっぱ会えないよね』
「…どうだった?馬」
『美しかった…!撫でさせてもらえて。朝からすごいエネルギーチャージできた感じ』
「俺も、穂波ちゃんに会えるといつもそんな感じだ」
『ひゃあ…嬉しい。ありがとう。 …わたしこれから洗濯干しに行くけど、
京治くんも来る? 物干し場、広々してて気持ちいいよ』
「うん、じゃあ行こうかな」
『やった。 …実はちょっと質問があって。動きながら聞いてもいい?』
「もちろん」
洗濯室から洗濯物を取り出してカゴを抱えて物干し場に向かう。
京治くんはカゴを持つよ、と言ってくれたけど、
これはわたしのお仕事なのでお断りした。
「…で、なんだろう質問って」
本の話に夢中になっちゃって聞くの忘れてた。
『あ、あのね。例えば、の話なんだけどね』
「うん」
『京治くんの好きな人が海外の大学に行くって言ったら京治くんはどんな気持ちかな?』
「…穂波ちゃん、海外の大学に行くの?」
『あっと、今はわたしの話ではなく、
頭で好きな人を思い浮かべながら想像?妄想?してください。笑』
「………あぁ、そうだね。うん。俺たちは付き合ってるっていう設定?」
『…俺たち? あ、うん、できたらそうだね、京治くんと好きな人はお付き合いをしてる』
「…寂しいは寂しいけど、応援したいって思うんじゃないかな」
『…だよね、わたしが逆の立場でもそうだもん』
「………」
『じゃあ、ちょっと掘り下げてもいいですか?』