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【ハイキュー】   “波長”   【孤爪研磨】

第21章 スイカ






「ちょっ……と…」





抱き抱えるためにしゃがんで
腰を前に倒していたので容易にホールドされてしまった
…まぁ、抱き抱えるにはやりやすいか







「じゃあ、失礼します」







膝の裏と背中に腕を回して抱き上げる。

首に回された腕はだんだん力が抜けていき
胸に顔を埋めるようにしてすーすーと寝息を立てている







「…はぁ………」








申し訳なさそうにこちらを見ている音駒の人たちに会釈をして部屋を出る。

とんだ迷惑だ。
でもその割に、ゆっくり歩いている自分がいる。
まぁ、成り行きとはいえ
好きなひとのこと抱き抱えてるんだから、当然。






『け……くん………』







間の音が聞こえないのは僕の頭が都合よく消してしまってるのだろうか。







『すき』







あの人はこんなにまで好かれてるのか…
寝ながらも、名前を呼ばれ抱きしめられ好きと告げられる。
そりゃ、少々周りに男が近づいてきても放ってられるってわけか。






ゆっくりと階段を登り
踊り場で立ち止まる。






…この寝顔、ずっと見ていたい。
朝目が覚めて隣にあったらどんな心地がするだろう。





顔が近づくように、腕をひょいっとする。
それでも足りない。
首を屈めて近くで眺める。






穂波さんはもにょもにょと何かを呟きながら
顔を少し浮かせたかと思うと唇を重ねてきた。





優しく吸い付くように口付けられる。
すとん、と力が抜けて唇が離れた時に
僕は、もう一度唇を重ねた。






…止められるわけないじゃん。






舌こそいれないものの
その柔らかく温かな唇に数回やわく吸い付くように口付けた。

それから、ゆっくりと唇を離す。










「…好きです」





『…ん……わたしも…』








そう呟くと、
胸に顔を埋めるようにして寝息を立てる。








…はぁ………








ため息か安堵か、一度大きく息を吐いて階段を登る。








穂波さんは自分でちゃんと布団を敷いていたようで
そこにおろすだけおろして後は任せた。






…もう2度とないだろうとした口付けは
諦めようと腹が決まるどころか全くの逆効果をもたらすことになった。


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