第21章 スイカ
「…鼻水?その服についてるカピカピしたの」
『…カピカピ……… そうなの、鼻水。泣いたときにつけちゃった』
「ふぅん …泣かされたの?」
『えっ?研磨くんに? ううん。 あ、いや泣かされたのか。 うん、泣かされた』
「………」
『あ、きのうヅッギィィィィー!って』
「えっ」
『あ、ごめん、びっくりさせちゃったね。山口くんが走ってるとこみた』
「あぁ」
『山口くんとは幼なじみ?』
「…うん、まぁ。そうだね。小学校のときから」
『…いいね、幼馴染って、特別だよね』
「…あの、昨日のことなんだけど」
『うん、スイカの時?』
「うん。 …もう大丈夫なの?」
『うん、おかげさまで』
「なら、いいんだけど」
『蛍くん、ありがとう。蛍くんのお陰だよ、本当に』
「………自惚れる」
『…ん?』
「なんでもない」
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そんな感じで、洗濯室に着くまでぽつぽつと話しながら歩いた。
洗濯室に着いて、
研磨くんのTシャツについた鼻水をお湯で濯いでる間も
蛍くんはそばに立ってる。
…なんかかわいい。
手懐けるのが難しい賢くて綺麗な犬に懐かれてる気分。
『座ったら?ベンチあるし。 …ふふ』
「…なんか、見ていたくなるんだよね」
『あぁ、人のやってること?』
「人っていうか…」
『わかるよ、すっごくわかる。わたしもね、そういうのある』
「そういうの?」
『わたしはね、例えば蛍くんなら眼鏡を拭く動作とか、それをかけ直す動作とか。
あと、あの味方サーブのときに後頭部に手を添える動作とか…」
「…結構みてるね」
『うん、つい、人のことみちゃう。観察好き』
「…もう、洗濯ボタン押した?」
『うん?押したよ』
「…じゃあ、隣座ってよ」
『へっ あぁ、うん』
蛍くんの隣に腰掛ける
蛍くんは敬語のときとタメ口の時とある。
リエーフくんはただぐちゃぐちゃと混ざる感じ。
蛍くんは切り替えって感じ。
その切り替えは、対わたしに関しては、心の距離なのかなって思う。
あと質疑応答のときも敬語になったりするか。
わかりやすいというか、なんというか。
「気になること、聞いていい?質問」
『うん。どうぞ!』