第21章 スイカ
『………ハグしながらいろいろと話してくれたんだけど、
んーと、なんでわたしが吹っ切れたみたいになったかっていうと、
いろいろ優しいこと言ってくれたのね。それは話した方がいい?』
「…いや、それを聞くのはあんまり」
プライバシーの侵害というか、
穂波に向けて言ったことを
それをまたおれに伝えなきゃいけないなんて絶対ない。
必要なことだけでいい。
『…いろいろ、優しい言葉をかけてくれて、
じゃ、僕行きますってほんとにスタスタ行っちゃうの。
これ昨日も今日も何度かあったんだけど…』
「うん」
『でもわたしありがとう言えてないって思って呼び止めて。
…この、蛍くんを呼び止めるってのも毎回やってるんだけど』
「うん 笑」
『ありがとう、優しいねって言ったの。普通にね、ほんとに普通にだよ?
変な動きもしてないし、まっすぐ立って言った』
「うん 笑」
『そしたら、 ほんっと、馬鹿じゃないの、きみ って言われたの』
「ふはっ 笑」
『それで、なんか、力が抜けた。
何してんだろー ほんっと、馬鹿なんじゃないわたしってなって。
ひとりでしばらくケラケラ笑った』
「…そっか。 …ん。 わかった。
シャワー浴びてきて、おれここにいるから」
『うん、ちょっと待っててね』
穂波が吹っ切れてた理由もわかったけど。
月島がそう言った理由というか心情みたいなものも多分わかった。
動揺してた時の表情と次に振り返った時の表情が
違いすぎるほどに違って、
それから多分、ありがとう、優しいね って言った時の穂波の笑顔が、
すごい綺麗だったんだと思う。
なんか、また1人増えたっぽいけど。