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【ハイキュー】   “波長”   【孤爪研磨】

第21章 スイカ








「…なんすか?」







それ以上の感情も意味も持たない、というような
影山くんの短い言葉が耳に届く。

はっ

わたし、一体何してるの。








『うっわ、ごめん。ごめんなさい!』








平謝り。謝罪。










『…つい、影山くんの指が綺麗で、惚れ惚れしてしまって。
スイカの果汁のほんのり赤い感じとかも綺麗で…気が付くと触っていました』







弁解。
この上なくよくわからないであろう弁解。
これでも大真面目です。











『不快な思いをさせてしまって、ごめんなさい!』










深く謝罪。











「…いや、別にいいっすけど。 あ、手はまぁ、毎日、手入れしてます」










『…そっか、あ、えっと、わたしは音駒高校の運天です。
影山くんだよね?えーっと、いきなりだけどちょっとわたしはここで失礼します………』










あぁ、私の奇行を咎めず話をしてくれたのに、
その場を去るわたし。失礼な変人でしかない…









ああああああ………
頭の中も心もパンクしそう

馬鹿なんじゃない、わたし









「仁花ちゃん、ちょっとわたし顔洗ってくる」









体育館側の水道へと走る。










こんなにまで動揺するのは他でもない。

研磨くんとのはじまりと、
だいぶ似たことをしていたから。

感情や状況は違えど、
美しさに心を奪われて、つい触ってたのは一緒だ。

その上、指で。 …その上、指を。









感情は伴っていないとはいえ、
ほら、さっきわたしお姉さん願望だとか、そういうことも思った。

多分、あのまま影山くんが何も言わなければもっとなんか変なことしてた。









反吐がでそうなほど気分が悪い。










いったいわたしは何やってるんだ。








普段は控えめに捻る蛇口を全開にして、
勢いよく流れる水で、何度も何度も顔を洗う。















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