第21章 スイカ
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英里「…ねぇ、ちょっと穂波ちゃん」
『…ん?』
森然でのご飯タイムは、
マネにとってもゆるやかな時間だ。
お仕事としてされてる方、
そして普段から高校生部活男子含む家族の食事を毎日作っているお母さん方の元で、
わたしたちは他のマネ業務に重きを置いていいからと、だいぶ、甘やかされている。
真子さんは洗濯を干しに行った。
わたしと英里さんはおかわりの人が来るのを待ちながらぼんやりと立っている。
「2つ、聞きたいことがある、いいかな?」
『…?』
「昨日の夜どこにいたの?」
『…あぁ』
「黒尾くんが心配して、かおりちゃんたちに聞きにきてたよ」
『ああああああ… もー要らんことばっかしてるわたし…』
「………」
『ご心配おかけしてすみません』
「ううん、朝起きた時もいなくてびっくりしたけど、ちゃんとお手紙書いてあったし。ほっとした」
『昨日は、森然高校の敷地で迷子になっちゃって…』
「あー 笑 雪絵ちゃんの読み通りだ」
『それで裸足になってたら、靴も靴下も落としちゃって、それをまた探しに行って…ってしてました。
…もうどうかいつまんで、なるべく端的に話しても馬鹿丸出し……』
「あはは!森然、ほんと敷地大きいよねぇ。馬もいるよ、みた?馬術部っていうのかな?」
『うそぉ… わたし馬大好き。 何ここ、ほんとに高校? まるで体験施設みたい』
「ほんとそれ。 でさ、もう一つはさ…」
英里さんの声が小さくなる。
身体を傾け、耳を近づける。
「今朝、烏野の眼鏡の子と何してたの?」
『あぁ、洗濯スペースで?…ふふ、何で小声なのー笑』
「えぇっ だってただならぬ空気というか状況というか…」
『…?』
「えぇっ なんで全然ピンときてないの?だって、ほらこんなふうにして!」
英里さんはわたしの肩に手を添えて、
顔を近づけ覗き込んでくる
「しばらく2人で見つめあってたでしょ!?」
『…あぁ。 あれは、蛍くんの髪の色と目の色をみたくって。
背が高いから屈んで見せてくれてたんです。まつ毛の色も…』
「えええええ ちょっとよくわからない。それ何かの上級な駆け引き?」
『そんな高等テクニック持ち合わせていません。単純なる探究心です 笑』