第21章 スイカ
ー穂波sideー
7月28日(土)
合宿2日目
4:00
せっかく緑豊かなところに来てるし、
キャンプ気分で少し早起き。
朝ご飯の仕込みもないし、
学食が開く15分前に行けばいいらしいので結構ゆっくりできる。
顔を洗って着替えて、水筒と本を手に歩き出す。
途中、2階の音駒生の部屋の前にある脱いだ服の入った籠を取りに来た。
寝巻きだしてからの方がいいかな。
…今日もしっかり晴れそうだし、わたしの服と一緒に寝巻きは洗えばいいか。
水筒と本を服の上に置いて、両手で抱えて歩き出す。
洗濯室への道は迷わずいけた。
まだ薄暗い。
小さな頃からサーフィンをしてるので、
この時間に動き回るのは日常的。
日の出前の空がすごい色を魅せてくれる時がある。
夕日が沈んだ後にもある。
どちらも、マジックアワーと呼ばれてるらしい。
すごい色は毎回じゃなくても、晴れた日、
特に雲がある程度ある日のマジックアワーは例外なく綺麗だ。
雲の有無は好みの問題だろうけど…
何であれ、わたしの大好物。
日の出は4時半ごろ。
なので今、まさにその時間が始まろうとしてる。
洗濯機を回して、坂の上へと急ぐ。
深い深い青と暖かいオレンジのグラデーション。
日の光の色、としか形容できない色が、
青とオレンジというグラデーションにし難い色をつなぐ
深呼吸。
それから、裸足になって太陽礼拝を一度だけ。
繰り返すことでどんどんほぐれていくけれど、
ヨガ、としてではなく、名前のまま太陽への礼拝。
早朝サーフィンに行けた時とかはいつもする。
心地いい。
芝生の上に座って、しばらく空を眺める。
研磨くんと朝のこの空をみたいなぁ。
…昨日、研磨くんによくわからないであろう話をした後、
階段のところで分かれ際、もう一度キスをした。
会話の内容が内容だっただけに、
熱を帯びてしまって、収拾をつけるのが少し、大変だった。
「…明日は、おれも一緒に夜、散歩する。
あしたの練習後はおれのだけでいて」
と言った。
誰といたって、わたしは研磨くんだけのものなのに。