第21章 スイカ
「…でも確かに、優しいんだね、月島だっけ」
『そうなんだよね、優しいんだよ、蛍くん。
最初話しかけるとき、ヤバい薬やってんじゃないかって思ったって』
「ふはっ 笑」
『でもそれなのに助けてくれるって相当優しいよね。
…あ、蛍くんにもお兄さんがいて。同じ6歳差だったのを、気持ち悪がられた 笑』
「…ふ 笑」
『あとは、靴がね… あぁやっぱやめとく』
「…え、気になる」
『…靴がさ、片方は木に引っかかってて。
もう片方はフェンスを超えてグラウンドの中に落ちてたの』
「…ぶッ 笑」
『もー絶対投げてるじゃん、意味わかんないーって
お腹抱えて笑ってた。抱腹絶倒ってやつ』
「…そりゃ、そうでしょ。しかも穂波それ覚えてないんだもん」
『…そっか。 …あと,何回か、馬鹿じゃないの って』
「…ふはっ 笑 気持ちのいいやつだね」
『辛辣』
「こうやって聞いてると、どこが優しいのかわかんなくなるけど」
『…笑』
「…なんか分かる、かな。 …でもそいつも救われたんじゃない?」
『…へっ?』
「木兎さんのスパイク練でブロック飛んでもらったらしいんだけど」
『あぁ、付き合わされたって』
「クロが煽りに失敗して怒らせちゃったって言ってた。
…珍しくクロがしでかした」
『…あ、そうなんだ』
「…だから、和んだと思うよ。穂波にはそういう力があるから。
じゃ、これで他の男の話はおしまい」
『…え、でも』
「…まだなんかある?」
『研磨くんの話も聞きたい』
「…おれは自主練もしてないし、翔陽は自主練してるし。
だから特にないよ。ゲームしてた。ごはんは穂波のが食べたくなる。
夜涼しくて過ごしやすい。 …そんな感じ」
『…ん。ありがとう』
唇が触れる。
暖かくて柔らかい、研磨くんの唇。
啄むように何度も口付けた。
「…ちょっと迷ったけど。やっぱ、つけたい」
『…ん?』
「…ここにおれの痕。つけていい?」
『うん。わたしは研磨くんの』
「…ん」
首筋にチリリと痛みが走る
唇が離れると、
いつものように研磨くんは指でそっと撫で
「おれの」
と呟いた。