第21章 スイカ

ー穂波sideー







「…それがリエーフでも一緒に探してって頼んだ？」








研磨くんに問われる。
わたし、気持ちよく踊った後で、
だいぶ意識があっちの方行ってたと思う。

蛍くんが“ヤバい薬やってるんじゃないか”って思うくらいには。








『…うん。お願いしてたと思う』

「…誘ってる、ってとる男がいないわけでもないと思うけど」

『…あ………』

「…まぁ、何もなかったならいい」

『…ごめん、わたし浮かれてたよね』

「それは、そいつにじゃなくて、風とかその場の空気とかにでしょ」

『うん』

「…穂波のそういうとこ好き」

『…………ありがとう』






蛍くんがわたしの口を押さえたのも
それを遊びと捉えてやり返したのも、
言うべきことなのか。

隠しておきたいわけじゃなくて、わざわざ言うことなのかがわからなくなる。



蛍くんにはそんな気なくって
うるさくて黙らせようとしただけだろうし。



わたしもはしゃいでやり返してしまったのは、
今考えてみるとやらなくていいことだけど…



だからってどうこうなったわけでもないし、
そう、そもそも蛍くんにそんな気がないのに誤解を招くような情報を伝えても、
研磨くんにも蛍くんにも悪影響なだけな気がする。



…頭をよぎっただけに、言わないことを選ぶのは
隠し事をするみたいな気持ちになるけど、
やましさなんてお互い一つもなかったし、
京治くんにチークキスしそうになったことと一緒で言わなくていい。
そう決めたら、もう、今は目の前にいる研磨くんに集中しよう。
大好きな人。