第21章 スイカ
『わぁ、研磨くん!』
生乾きの髪の毛で
ほっかほかほわほわの顔して
穂波が上がってきた。
「…ん。会いたかったし、来た」
『…ありがとう。嬉しい』
「…外は湯冷めしそうだから、ここで話そ」
『うん』
「…………」
質問するとイライラしそう。
おれって自分で思ってる以上に嫉妬深いのかな。
根には持たないんだけど、
説明きいて分析し終えるまでに、どうしてもイライラしたりすることがある。
『ええっと、迷子について聞きたいよね。
携帯電話部屋に置いてて、持ち歩いてなくてごめんね』
「…まぁ、それはいつものことだからいいよ。いつも持ち歩け、とか思わない」
『…ん。ビブスをね、洗濯しにいって………』
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洗濯待ってる間に音駒の自主練手伝おうと思って探してたら迷って、
迷ってたら風が吹いて気持ちよくて走りながら踊ってたら
校舎が見えて、でも靴がなくなってた。
でも考えても仕方ないし、踊ってたら烏野11番に声かけられた。と。
声かけたって言っても、
軟派な声かけであるはずがなく、
至極真っ当な、嫌悪すら感じ取れる疑問みたいな。
実際、呆れた様子で会話を諦め2度去ろうとしたらしい。
『でも、何でか知らないけど、探すって言ってくれて。
とにかく、蛍くんが優しいということがその時わかった』
…そういうとこだよね。
そういうとこが、想定内を想定外にしてく。
穂波の流れに巻き込まれるのは、
不思議と違和感がなくって、
一歩足を踏み入れるとするすると無理なく流れてくんだ。
無理がないっていうのは、
巻き込まれたからって、流されるんでも自分を見失うんでもなく、
おれはおれのままでいられるみたいな感じ。
だから想像つく。
あの賢くて冷静なやつでさえも、
その波に、流れに乗ってしまわざるを得なかったんだろうなって。
化学変化みたいなものだ。
どうすることもできない。
「…それがリエーフでも一緒に探してって頼んだ?」