第21章 スイカ
ー月島sideー
見覚えのあるところまで来たという。
お腹もぺっこぺこだし、
風呂もやっと入れるし、喜ぶとこなはずなんだけど…
穂波さんは安堵の色を顔に浮かべて
途端にありがとうを連発し始める。
…調子狂う。
穂波さんの唇を手で押さえて、手の甲に僕の唇をつけた。
ぎりぎり、これでもぎりぎりなんとか、理性で抑えた。
…ほんと、ぎりぎりだけど。
目をまん丸くして固まる穂波さん。
…ちょっと、かわいすぎる。
このまま押し倒したくなるんですけど。
手のひらを離して、かがめてた腰を伸ばすと
さらにかわいい顔で見上げてくる。
びっくりしたって。僕もびっくりしてる。
だからさっきから、調子狂うって言ってるのに。
「じゃ、そっちに行きますか。坂降りればいいわけ?」
『うん。転ばないように気をつけてね』
「…あぁ、僕は大丈夫だけど。穂波さん、気をつけて。
…手、繋ぐ?…ここだけでも」
『…あ、ううん、大丈夫。ありがとう。 今はちょっと、ドキドキしすぎてて無理』
…断る理由が、かわいすぎかっての。
なんなのこの人。
『…わたしさ、サーフィンするんだぁ』
「…はい」
『波はこういう角度のも普通にある』
「………」
サーフィンをしてるみたいな体勢?をして坂に立ってる。
腰を落として。
『こうやって、波の高いとこにいるようにして、前足をねプッシュするの。
そしたらビュンって加速する』
「………」
『それで、力を抜いたままね、ふわっと波を利用してさ、こうっ 上手く言えないんだけど
また波の高いとこに戻るの。それを繰り返してさ、どんどんスピードが出る。
前に前にどんどん波が出てきて、それに乗って長ーい波の上を滑ってくみたいにするの』
「………」
『それがさいっこうに気持ちいい。技なんて決めれなくても、ただ同じ動作を繰り返してるだけでも。
でもね、波は同じものはないから足の裏で感じながら… ってよくわかんないよね』
「………」
『自分で言っててよくわかんなくなってきた』
また、くしゃっといたずらっぽい笑顔を見せる