第21章 スイカ
ー穂波sideー
「すみませーん」
遠くから男の子の声が聞こえる。
高いけど落ち着いてる、印象的な声。
──風に乗って走ってたら、気づいたら踊り出していた
歩きながら走りながら踊るのって気持ちいい
去年の夏ハワイにいた時以来だ、この感じ。
そう言う時はどうしてもフラの要素は入ってくるけど
フラダンスってわけじゃなくって
もっと枠を超えていつも以上に勝手に踊ってしまう
気がつくと校舎が見えて、やった!戻れたって思ったんだけど。
靴も靴下も落としてきてることに気づいた。
これで戻ったらまた迷子になるかもしれない
っていうか、どこを通ってきたのかすらわかんない。
途方に暮れそうになるけど
そういえば校舎まで来れたんだって思い出して
嬉しくなってまた踊ってたら声をかけられた。
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心底呆れた、という様子で2度もこの場を去ろうとした月島くん。
1度目は引き留めた。
彼の冷静さがあれば迷子にならずに靴を探すことができると思った。
2度目は、まぁいっか、疲れてるよね。って普通に思って
『…………ん。お疲れさま!』
と、見送ったつもりだったのだけど
月島くんはまたも振り向いて
それから長いため息をついた。
「…少しくらいなら探すの手伝ってもいいですけど、変なことしないでくださいね」
『…へっ?』
「冗談ですよ。 でも、変なことされても知りませんよ?」
『…へっ?』
…ちょっとよくわからないけど
月島くんが優しいことだけはわかった。
『…ありがとう。月島くんて優しいね』
「はぁ!? なんでそうなるの。 やっぱ馬鹿じゃないの」
『…馬鹿って 笑 辛辣だなぁ、月島くん』
「…はい、もうおしゃべりはいいですから、どっちから来たのか教えてください」
『…えぇっ! 月島くんの方がいっぱい喋ってたよ?』
「…だから、おしゃべりはもういいですから。どっちから来たんですか」
『…………』
「もしかして覚えてないんですか。無意識ですか。気付いたらここで踊ってましたって?
ていうか……… はぁー………」
すごい早口で至極真っ当な疑問を投げかけられた気がする
月島くんってこんなにおしゃべりする子なんだ。