第21章 スイカ
ー月島sideー
梟谷と音駒の主将に付き合わされて、
ブロック練習をすることになった。
そのうちに音駒の部員がぞろぞろとやってきたので、
そのタイミングでその場を去ったのだけど、
第一体育館にサポーターを忘れてることに気付いて戻り
サポーターを手にして体育館を出た。
…思うことはいろいろある。
日向のこと、梟谷と音駒の主将に言われたこと、兄貴のこと…
でも結局、何をこんなごちゃごちゃ考えてるんだ、馬鹿馬鹿しい。
そうやって半ば意図的に考えることにストップをかけている自分がいる。
それすらも馬鹿馬鹿しい。
まだ学食閉まるまで時間あるし、
風呂入ってから夕飯たべよう。
…え、なに?
校舎の方に曲がろうとしたら、
進行方向とは反対側の方で何かが動いた。 …気がする
近付くのは賢明じゃないし、
その場でじっと見据えてみる。
顔はよく見えないけど、女の人が踊ってる…のか?
長い髪が風と戯れるように靡いて
身体のラインはしなやかでやわらかい
…これきっとあの人でしょ
音駒のマネ代理っていう。
近づいて行くとアスファルトの上で裸足になってる
表情はぼんやりとしか見えないけど、恍惚としてるというか。
何この人、ヤバい薬とかやってないよね。
「あの、ちょっと」
………….
「すみませーん」
その人は、腕を上にあげて周りながらゆっくりと止まり、
僕の方を振り向いた。
ゴクリ。
ハッと息を飲んだ。
その表情が、あまりに美しかったから。
どっしりと地に足をつけながらも、
一度風が吹けば、一瞬で消えていってしまいそうな儚さをも感じる。
「…ッはぁー」
深呼吸ともため息ともつかない息を吐き、
自分を落ち着かせる
「…ちょっと、何してるんですか、こんなとこで」