第21章 スイカ
ー赤葦sideー
森然は校舎も敷地も大きいので、
バレー部が使用する範囲は限られているとはいえ、
音駒のときほど遭遇率は低いように思う。
…って言っても、まだ今は初日の昼休憩なんだけど。
ご飯をよそうところに穂波ちゃんを見つけた。
もう一人、烏野の清水さんもご飯担当のようだが、
俺は穂波ちゃんによそってもらえる順だった。
…素直に嬉しい。
まだ、挨拶ができていなかったから。
朝食や夕飯と違って
昼食は一気に部員が押しかけるので、
ゆっくり話してはいられない。
それでも、簡単な短い会話をしただけなのに
これほどに心が昂るとは。
昨年同様、森然では自主練もがっつりとやるだろうし、
音駒の時のように調理室に行けば穂波ちゃんに会えるわけでもない。
なかなか会う機会はないかもしれないが、
顔を見て、少し会話ができるだけでも十分だ。
抑えられない衝動が沸き立つことも多々あるが、
ゆっくりでいい、と考えている。
そのゆっくりしたさきに何があるのかは知らないが、
いや、穂波ちゃんは孤爪を想っているのだし、
その先には何もないのだろうが、
それでもゆっくりと、この関係を味わいたいと思う。