第21章 スイカ
「あ、あと烏野のメガネ!あいつも要注意ですよ!」
MBの賢いやつ。
…そう、おれもちょっと気になったんだよね。
なんか目線穂波の方にやるな〜みたいな。
それがなんていうか、木兎さんとか木葉さんとかじゃなくって
あの感じでだから、ちょっと、まぁ気になるよね。
…ま、なんでもいいんだけど。
集合して、話聞いて、バスに乗り込む。
後ろが4席。
あとは2席ならんでるとこと通路挟んで1席だけのとこ。
とりあえず2並んでるとこにする。
最後に乗り込んできた穂波がきょろきょろする。
「穂波、こっち」
…別に、約束してたわけじゃないけど。
「…1人で座りたかった?」
『…そうした方がいいのかな、って思って挙動不審になってた。
何も考えなければ真っ直ぐ研磨くんのとこに行っちゃうから』
「…それでいいのに」
何も考えずにおれのとこにくればいい。
『研磨くん、1週間よろしくお願いします』
「…ん。迷子にならないようにね」
『…それ犬岡くんにも言われた。そんなに大きいんだね』
「うん。山深くて緑も多いからきっと穂波好きだと思う。水も冷たいし」
『…楽しみ』
鈍いエンジン音を鳴らして、バスが動き始める。
高速使って1時間ちょっと。
バスでゲームすると酔うからな。
…あ、そういえば
「これ、周平から送られてきた」
『…ん?なになに?』
周平は夏休み、1ヶ月ニュージーランドでスノボ三昧って言ってた。
言い方は遊びっぽいけど、ほぼほぼ仕事なんだろな。
で、「かわいいかわいい研磨へ」とだけ言葉を添えて、
iTunesで色んなアルバムを送ってきた。
…てか、かわいいって何
「アルバムをこんなに一気に。ギフトで」
『…へぇ、それはまた急な』
「穂波好きなやつある?」
『…んーどれも好き』
「…じゃあ、今聞きたいのある?」
『…んーこれかな』
片方ずつイヤホンをつけて、
おれの脚の上で手を握って、
ぼんやり窓の外を見る。
そのうちにおれも穂波もうとうとし始めて、
いつに間にか眠ってしまってた。