第20章 banana pancakes
周平は皿を洗って、
メロンを食べながらおれがLINE登録するのを見届けると
さくっと帰っていった。
『…周平と2人、どうだった?』
「ん?…別に普通だよ」
『…ふふ。別に普通。嬉しい』
「…?」
よくわかんないけど、本当に嬉しそうな顔してる。
「…穂波、レッスンお疲れさま」
『うん!ありがとう。気持ちよかったぁ。それから、帰る時間もすっごく楽しかった』
「………」
『前にもあったけど、家に帰ったら研磨くんがいるって思うと、
改札抜けるのも、電車の待ち時間も、全部が楽しい』
「…あぁ、うん。ちょっとわかるかも。
おれもいつも穂波が待ってる家に帰るときそんな感じ」
『………』
自分だって同じようなこと言ってるのに、
何でいつも照れるんだろ。
…かわいいけど
「…ハリーポッターみる?今ならまだ観れるんじゃない」
『…うん!観る!』
「じゃ、シャワー浴びよっか。おれも台所で火使ったら汗かいたし…」
『………』
今度はおれの胸元から首筋のあたりをじっと見てる。
………。
「…穂波、おいで」
腕を軽く広げてみると
ぎゅっと抱きついてきて、それからやっぱりすんすんしてる。
おれも腰に腕を回して抱きしめかえす。
『…はぁ いい匂い』
「………」
『…ん、よし。シャワー浴びて、映画観よう』
…最初はよくわかんないって思った穂波の行動も、
ちょっとわかるようになったりしてる。
こんな風にあからさまに匂い嗅ぎたくなったりはしないけど、
汗の匂いをいい匂いって思うのは、ちょっとわかる。
実際今、穂波はレッスン帰りで、
抱きしめると髪の匂いとかの他にほんのり汗の匂いも混じる。
すんすんとまではしないけど、すぅーってちょっと多めに息吸ったりは…しちゃってた。
まぁ、やっぱりよくわかんないままのことの方が多いんだけど。