第20章 banana pancakes
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どれもこれも今日も美味しかった。
皿洗いを一緒にして、メロンを食べてる。
『前は、ぶどうといちじくだった。今日はメロンが美味しいよって、八百屋さんが』
「うん、メロン美味しい」
瑞々しく、香り高く、甘い。
………。
お茶を飲み終えると、穂波はまた台所に向かった。
プリンを作るんだって。
きっかけはおれの髪の毛だって。
…つくづく穂波らしい。
穂波は染め直したら、とか言ってこない。
だからって無頓着ってわけでもない。
その、気の行き方がちょっと独特なだけで…
からかいもしないし。
心地いい。
あー、後ろから抱きつきたい。
でもちょっと我慢。
水を片手にソファへと移動する。
ゲームの続き。
台所から甘い香りが漂ってくる。
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「…もう終わった?」
『うん、いまオーブン。タイマーなって、出したらおしまい』
「…そっか」
手には、さっきと同じ洋書。
『あっ 破れた』
本を落としそうになって咄嗟に掴んだら、
ブックカバーにしてる紙が破れたらしい
「………」
『本は無事。よかった』
「…ん。 そのカバー、自分で紙選ぶの?』
洋書だしサイズも違うぽいし、
何より色柄の雰囲気がすごく穂波っぽかった。
『…そうなの〜 綺麗でしょ』
「ていうか、読んでたのそれなんだね」
表紙には昨年亡くなった、電子機器会社のCEOの評伝だった。
表紙に大きく顔が載ってるから一眼でわかる。
父さんも読んでたし、おれの家族の携帯やタブレット、パソコンは全部そこの会社のものだ。
『あ、うん。やっぱ魅力的だよね。気になって。 …すごく面白いよ』
「へぇ」
『全然堅苦しくないの。 えっ、こんな人だったんだ、って驚いてる』
「……」
『あ、別に堅苦しいイメージがあったわけじゃあないんだけど…』
「うん …ねぇ、穂波」
『…ん?』
「こっち、来て』