第20章 banana pancakes
ー穂波sideー
研磨くんを送り出してから、
2回目の洗濯物を干して、
勢いで第3段を回す。
晴れた日の洗濯って楽しい。
つい、欲張ってしまう。
雨の日は雨の日で、急がなくていいよ〜って感じがして、それも良い。
ざっくりと拭き掃除をして、掃除機をかけて。
掃除や洗濯は好きだけど、
決して丁寧ではない。ざっくりだ。大雑把。
宮城のおばあちゃんは、本当に丁寧に掃除をする。
掃除だけじゃない、お料理も、家のこといろいろ。
ほれぼれするけど、自分ではできない。
性質みたいなもの、だと思って割り切ってるけど。どうなんだろ。
でも決してわたしに押し付けたりはしなくって、
自分がやってて気持ちいいからしてる。
自分のための儀式みたいな感じなのかなって思ったりする。
そこだけは、一緒かなって思う。
そして、その丁寧さは佇まいにも現れるもので、
何もしてなくても、ただ座ってるだけでもひしひしと伝わってくる。
そうなりたいという、羨ましさではなく、
ただただ本当に自分にないものに憧れる、という意味で
そういう丁寧さを持ち合わせた人に対して、
ないものねだりの感覚がずっとある。
たまにそういう人に出会うと、
ついついちょこんとそばに居座ってしまうことがある。
プリン、作ろうと思ってたけど
アイス屋さん行くし、いそがなくっていっかぁ。
少しだけ勉強して、本を読んだ。
前、合宿で話した時、京治くんが教えてくれた本。
もう終わりの頃だったので、最後まで読んでしまった。
スピード感も、伏線のばら撒き方も、
最後に怒涛に回収されてく感じも、
とってもおもしろかった。
…そして嗚咽がつくほど泣いてしまった。
あぁ、目が真っ赤。 ま、しょうがないか。
研磨くんが駅に着く前に買い物を済ませとかなきゃ。
商店街へ自転車で向かう。